私の天体観測機材2018
−48年前の12cm反射とEOS Kiss X4−
福井雅之
はじめに
私の銀河鉄道掲載写真の多くは、48年前に購入したミザール12cm反射望遠鏡 & CANON EOS kiss X4一眼レフカメラで撮影し、PCソフトで画像処理したものです。口径20cm〜30cmが当たり前の時代、こんな見劣りする機材でもそれなりの写真に仕上げられるようになったのは高感度撮像素子を搭載したカメラと高性能画像処理ソフトのおかげです。
ソフトウェアによる画像処理については、銀河鉄道バックナンバーで紹介させていただきましたので、今回はそのハード編として私の天体観測機材を紹介させていただくことにします。
第51号(2016-08-23)
動画とソフト処理による惑星写真への挑戦
第54号(2017-09-02) Google Nik Collectionによる 星雲写真の画像処理
第55号(2017-12-29) 2017ふたご座流星群撮影記
1.ミザール12cm反射望遠鏡
この望遠鏡を購入したのは社会人スタートの1980年。当時の初任給約1か月分をはたいてミザール反射望遠鏡120SL(12cm反射鏡筒&アイピース)+AR-1型(赤道儀)を手に入れました。初めてのまともな望遠鏡がうれしくて毎週のように惑星や星雲の眼視観測に箱根まで出かけました。しかしその熱も次第に冷め数回/年の細々観測で現在に至っています。長年の保管で付着したカビを落とすために主鏡を水洗いし、それを戻すときの光軸調整がうまくいかずレーザーコリメータを自作(第36号2011-08-21掲載)、しかしその光軸は現在も納得できる状態までに追い込めていません。それでも48年経過した今も現役で活躍してくれており、優等生ではありませんが今後もいい相棒でいてくれることと思います。
*10年ほど前、ミザールのフラッグシップ機CX-150(口径15cm)を中古で手に入れましたが、私には重すぎて物置の奥でぐっすりと眠っています。
2.望遠鏡周辺機器
せっかくの望遠鏡、眼視観測だけではもったいないので写真撮影用の機材を購入し始めたのが望遠鏡購入20年を経過した2000年以降。ネットオークションでミザールの古いカメラアダプタ(アイピースにコンデジを取り付け)や極軸望遠鏡を手に入れたのを手始めに、ミザール本社に出かけて購入した一眼レフ用カメラアダプタや長焦点変換レンズETL-2などなど(第21号2006-09-03掲載)。ようやく美しい天体の姿を写真に収められるようになりました。しかしどうしても手に入れることができなかったのが天体を追尾するモータドライブ。とっくに生産中止になっており、ミザール本社にかろうじて残っていたステッピングモータとギアのみを安価で譲っていただくことができ、その入手から3年後にようやくコントローラを設計・製作しました(第30号2009-08-30, 第31号2009-12-30掲載)これは自作モータドライブとして今も現役で活躍しています。その他少しずつ入手した付属品の写真を以下に掲載します。
3.撮影用カメラ
中学校時代以来ずっと天体写真で使ってきたフィルム式一眼レフカメラ(アサヒペンタックスSP)も2000年以降のデジタル化の波に押されお役御免になりました。コンデジ オリンパスC-730⇒デジタル一眼CANON EOS kiss X2からX4を順次購入して現在に至っています。
EOS Kiss X4の最大の進化は、
1)その高感度の恩恵によりバルブ撮影時のシャッター開放時間を短縮することができたこと
2)ライブビューの拡大表示でピント合わせが楽になったこと
3)PCからUSBケーブルをつないでの遠隔制御でカメラ設定/画像確認/撮影ができるようになり車内や室内からの横着撮影が可能となったこと
特に寒い日の横着撮影は効果絶大、12/13〜14ふたご座流星群(朝霧高原)や1月31日皆既月食(自宅)の撮影では、暖房を効かせた車内・部屋の中で苦も無く作業できるようになり還暦過ぎのオッサンにはありがたい限りです。
4.撮影スタイル
機材からは外れますが私の撮影スタイルを紹介します。「できるだけ空の暗いところでの撮影を…」をモットーに車での移動撮影が中心です。
静岡県内での撮影ポイントとしては、
1)朝霧高原(富士山西麓に広がる高原。富士山と一緒に星座写真を撮るには最適。)
2)伊豆高原(伊豆半島のなかでは比較的良好な夜空。伊東の街明かりがなければ…)
3)井川湖周辺(南アルプスの南側玄関口。私が行った静岡県観測地で最も暗い??)
4)箱根スカイライン(近場で手軽に行けるが、熱海や三島の明かりが…)
などなど。好条件はやっぱり静岡市から北へ30kmに位置した南アルプスのふもとにある井川湖周辺、静岡県東部からはちょっと遠いですが、ここで見る星空は本当に吸い込まれるような美しさです。
車移動が中心ですので、観測機材は積込み・組立・撤収が簡単にできることが条件、上述機材は割と手軽に作業ができることからこの条件にピッタリです。
今年は7〜8月の火星大接近もあり惑星撮影に力を入れてみたいと思っています。惑星撮影は高倍率が必須で大口径望遠鏡にはかないません。12cmでどこまで火星の極冠や模様が写るか?小さすぎる衛星フォボス・ダイモスは?12cmがダメなら物置に眠っている15cmがある…。動画撮影での合成やGoogle Nik Collectionなどを駆使して見栄えのする惑星像に挑戦をしてみたいと思っています。次回以降銀河鉄道で成果を紹介できればと思います。
今回紹介した観測機材を使った1/31皆既月食中の月と4/28活動極小期の太陽です。どちらも同じ直焦点(焦点距離740mm)ですので大きさが比較できます。
(ミザール120SL740mm直焦点、
Google NIK Collectionで処理)
(ミザール120SL740mm直
焦点)
<観測機材の紹介>
写真3.天体撮影機材一式
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写真4.直焦点のアダプタでカメラ取付け
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写真5.ミザールSP型極軸望遠鏡
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写真6.カメラアダプタ(ミザール) |
写真7.ほとんど出番のない補助レンズの数々 (2X バーローレンズ/反転プリズム/長焦点変換用レンズ/暗視野ガイドアダプタ) |
写真8.自作太陽撮影用フィルター |
写真9.カメラアダプタ(ミザール旧タイプ) |
写真10.雲台とガイド望遠鏡(ミザール)
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写真11.モータドライブ(ミザール)
(中古不動品をやっと手に入れて修理しました) |
写真12.自作モータドライブとコントローラ
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