レーザーコリメーターの自作

−ニュートン式反射望遠鏡光軸調整−

福井 雅之

 

1.はじめに
ミザールの12cm反射望遠鏡(120SL)に自動ガイド(銀河鉄道30号・31号参照)をつけてから何度か星雲・月・惑星の天体写真を撮りましたが、ボヤッとして納得いく作品になりません。月はピンボケ写真、土星は眼視・写真ともまともな輪に見えません。
昔はもっとシャープに見えていた筈。原因は“主鏡と斜鏡を水洗いした時の組付けが悪く光軸が合っていないのでは”と勝手に決め付けるに至りました。
そこで目と勘に頼った光軸調整から脱却するために、ニュートン式反射望遠鏡光軸調整治具の定番であるレーザーコリメーターを自作することにしました。
(調整の腕が悪いのを棚に上げ、専用治具に頼ろうとするいつもの悪い癖ですが・・・)

2.仕様
レーザーコリメーターの原理は“レーザーの直進性を活かすことで、接眼部からまっすぐに照射したレーザーが斜鏡・主鏡に反射して再び斜鏡に反射して元の照射位置に戻るように調整するもの”ですので仕様と言えるほどのものはありません。しいてあげるなら照射角精度ですが、測定が難しいので今回数値化できませんでした(実際には、以下4.の調整で精度を追い込みます)。

3.設計・製作
インターネットで検索すると何人かの方が製作記事を公開しておられますのでそれらを参考にさせていただきました。使用したレーザー発光部は、秋葉原で購入した500円のレーザーポインタです。収納用の筒は塩ビパイプで、こちらは今回ほとんどの加工・製作を引き受けていただいた会社の先輩から譲っていただきました。材料費はレーザーポインタ本体とレーザーポインタを保持するねじくらいでしたので1000円以下です。先輩に感謝です。
 
<今回作ったレーザーコリメーター外形図>



塩ビパイプは外径32mmと26mmの2種類、32mmは外筒、26mmはレーザー反射板(標的)貼り付け筒と接眼部取り付け筒に使います。接眼部取り付け筒はアイピース規格の24.5mmより若干太いので先輩に旋盤で削っていただきました。
レーザーポインタ保持は望遠鏡ファインダーによくある構造で、M3×20mmの6角穴付ボルト6本で固定します。なおレーザーポインタのスイッチ部はM3×12のローレットねじを使用しました。それぞれ塩ビパイプに直接タップを立てています。レーザー反射板(標的)はパソコンで作画し、写真用光沢ペーパーに印刷、中央に1mm程度のレーザー照射用の穴を空けています。

4.レーザーコリメーターの調整
できあがったレーザーコリメーターの調整は、レーザーが的の中央から出てまっすぐ平行に照射されるようにレーザーポインタ保持ボルト6本の調整のみです。
@まずレーザーポインタが中心になるよう目視で6本のボルトでバランスをとります。
A標的中央の穴からレーザー光が照射されるように前側(レーザー照射側)3本のボルトを調整します。
B望遠鏡から取り外した接眼アダプターを万力でしっかり固定し、レーザーコリメーター本体を差し込みます。
C3m程度離れた壁に貼った白い紙にレーザーを照射します。
 レーザーコリメーターを少しずつ回転させレーザーの照射点をマジックでプロットします。
Dプロットした円が最小になるように後ろ側3本のボルトを調整し、緩まないようナットで固定します。
    
    *もし、レーザーが標的中央からずれて光が出なくなったときは、Aからやり直します。

5.望遠鏡の調整
いよいよ製作したレーザーコリメーターを使った望遠鏡の調整です。
@主鏡のレーザー照射位置がわかるよう、ドーナツ型の白いシールを主鏡中央に貼ります。
 私は100円ショップで売っていたポリプロピレンの綴じ穴補強シール(外径14.5mm内径6mm)を使いました。
Aあらかじめ望遠鏡の説明書に記載されている光軸調整(ドローチューブから覗いた斜鏡・主鏡のセンター調整)をしておきます。
Bレーザーポインタを接眼部に挿入し、レーザーを照射します。
C斜鏡のねじ3ヶ所で、レーザーの光点が主鏡の中央(ドーナツの穴)になるよう調整します。
    
D主鏡のねじ3ヶ所で、レーザーコリメーターの標的の中央に光点が来るよう調整します。
  

 光軸が合うと、主鏡に反射するまでと、反射した後戻るまでのレーザーの光跡がぴったりと合います。

  

6.おわりに

製作したレーザーコリメーターとこれで調整後の月の写真を掲載します。他の惑星が撮れていませんので、ピンボケ気味が今回の光軸調整で回復したかどうかはっきりしませんが月の写真で何となく改善したように感じます。近々、高倍率で土星・木星を撮ってみて過去の写真と比較してみます。
 
  写真1:組立中のレーザーコリメーター(1)     写真2:組立中のレーザーコリメーター(2)
 
   写真3:望遠鏡光軸調整風景(1)         写真4:望遠鏡光軸調整風景(2)

  
      写真5:光軸調整後の月面写真(月齢9.1)
        撮影日時:2011-7-10 20:23
        MIZAR 120SL(12cm反射)+ETL-2(長焦点変換レンズ) 直焦点 露出:1/125
        ADOBE PHOTOSHOP ELEMENTS 9 自動スマート補正
       (まだまだピントが甘いかも・・・)

 

  

      写真6:光軸調整前の月面写真(月齢7.4)
        撮影日時:2010-2-20 20:41(少し古いですが)
        MIZAR 120SL(12cm反射) 直焦点 露出:1/125秒 トリミング
        ADOBE PHOTOSHOP ELEMENTS 9 自動スマート補正
   (ETL-2を使った写真がなかったので直焦点をトリミング。周辺部のピントが甘い・・・)

 


 

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