「平らな三日月」の予報
 
                    上原 貞治
 
 夕方、西の空に見える三日月の傾きが時によって違うことはしばしば指摘されています。とくに、三日月が平らに近い状態(地平線に対し て寝た状態)になると、見る人に一種独特の印象を与えるようで、古来より、天気占いや米相場の占い(すべて迷信ですが)に利用されています。 また、明け方の東の空に見える月齢26付近の月(有明月と呼びます)にも同様の変化がおこります。こちらは、「二十六夜待ち」の風習などと関 係があるかもしれません。
 
 平らに近い三日月(または有明月)が見る人にどのような印象を与えるかを調べるには、まず自分で観察してみるのがいちばん、というこ とで予報を計算してみました。天文民俗学の立場からの研究成果の紹介や実際の観察の結果については、また後日に譲りたいと思います。
 
 おおざっぱに言って、三日月の傾きには1年の周期(季節変化)があります。平らに近い三日月が見られるのは春頃です。秋頃には立った 姿の三日月が見られます。有明月は、これと逆で、春に立って、秋に平らになります。これは、太陽と月の位置の南北関係によります。これに、さ らに、19年の周期が加わります。太陽の通り道(黄道)と月の通り道(白道)の交点が、18.6年の周期で移動することにより、月の位置の南 北へのずれが多少変化することによります。
 
 見る土地の緯度による違いもあります。あとで少し触れますが、 緯度の低い地方では、「平らな三日月」は珍しいこともなんともありま せん。また、緯度の高い地方では、三日月はそもそも平らになりません。日本の中央あたりの緯度が、平らな三日月の伝承が生まれるには最適の土 地であったことになると思います。
 
計算方法の詳細と結果の誤差についてはこちらにあります。 
 
 計算結果は、以下の年号の隣の「三日月」あるいは「有明月」をクリックすると出てきます。日時と傾きの角度の他に、月齢と太陽と月の 方位角・高度も載せてあります。
 
 計算は、東京で観測した場合です。緯度がほぼ同じである関東、中部、近畿、中国、、四国、北九州地方でしたら、結果に大きな違いはあ りません。ただし、ほぼ同じ観測条件になる時刻が、経度が1度西にいくごとに4分遅くなります。(たとえば、関西ではほぼ20分後に似たよう な条件になる) 緯度が違うと三日月の傾きが変化します。大ざっぱに言って、緯度が1度北に寄りますと、傾きは1度増加します。南に1度より ますと、傾きは1度減少します。東京やそれより北の緯度では、三日月や有明月が正確に平らになることは ありません。より南の地方では、完全に平らになることがありますし、傾き方が左右逆になることもあります。
 
 それでは、観察をしてみてください。 三日月は当分平らに近くはなりませんが、有明月はこの秋から(2002年)、早速見頃のようです。

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