小谷昭先生の天体観測ベースをお訪ねして

田中邦明  

 この記事は、2021年7月中下旬の2回、小谷昭先生の天体観測ベースを、福井氏とお訪ねした際の報告である。
 小谷昭先生に関する記事は、WWW版 第61号(2019年12月28日発行)福知山児童科学館「アマチュア天文家が見た神秘の天体写真展」訪問、また、WWW版 第64号(2020年12月27日発行)「『はやぶさ』から『はやぶさ2』」では、讀賣新聞朝刊(京丹後丹波版)に、掲載された小谷昭先生を取材した記事を紹介している。

 小谷昭氏の天体観測ベースを、福井氏と訪問した。
小谷先生と福井氏
 小谷先生(右)と福井氏(左)

 当日、福井氏の自宅近くのコンビニエンスストア駐車場で待ち合わせて、二人で小谷先生の観測ベースを目指して小一時間マイカーを走らせた。

 少し迷いながらも、予定の時刻より早く到着。到着後直ぐに天体望遠鏡が設置してあるところへ案内していただいた。

 一見、農機具小屋風の建物の約8割ほどを天文関係の機材が占拠しており、残り2割ほどをトラクターが占拠している。占拠というより、遠慮気味に格納され、赤道儀から下ろされた望遠鏡本体や、各種天文機材が大きな顔をして鎮座している、そんな第一印象であった。

 これは、所ジョージ氏の「世田谷ベース」の天文版「小谷昭氏の天体観測ベース(小生が勝手にネーミング)」ではないか、そんなイメージである。

 挨拶も簡単に済ませ、早速マニアックな話が始まった…ところへ、奥様がアイスコーヒーを出してくださって、少し熱っぽい展開から落ち着いた展開へ。

 天体観測ベースの中にテーブルと椅子を出していただき、腰掛けてアイスコーヒーを戴きながら、小谷先生撮影の天体写真(キャビネ※1〜四つ切り※2)数十枚を拝見しながら、それぞれの解説を伺った。

 どれもレベルの高い作品ばかりである。自称「ゆる天」の私などからすると「凄い」作品の連続である。

 かつて遠征された皆既日食はもちろん、世界一星空が美しいと有名なニュージーランドのテカポハイツもあり、「おお〜」「え〜」など、会話にならない感嘆詞の連続であった。

 一通り写真を拝見した後、ふと見ると、外の綺麗に打たれたコンクリート上に、2カ所、天体望遠鏡が格納されていると思われる建物等が見える。

 (決して小さくはない)農機具小屋・天体観測ベースの中にも既に複数台の赤道儀や天体望遠鏡があり、いったい何台の赤道儀と望遠鏡があるのか…と思いながら、今度は、外にある2箇所を拝見することとなった。

 まずは、主砲が格納されている主観測室へ。二部屋あり、一部屋にはセレストロンC11鏡筒が何気なく置いてある。もう一部屋には既製品ではないオリジナリティの高い高精度赤道儀が設置してあり、タカハシ製主砲が載せられている。

小谷先生と高橋製作所製主鏡
 小谷先生と高橋製作所製主砲

NJP
 カメラ部分

  これはエキスパートの主砲。直ぐに、この機材の能力をフルに引き出し、帰還中の「はやぶさ2」を撮影されたことがイメージされた。

 主砲の次に見せて戴いたのは、コンクリートに打ち込まれたアンカーに鎖でつながれたNJPである。このNJPには自動導入用モータードライブが搭載されており、先ほどのC11を載せ、カメラを載せて自宅からリモートで使用されているそうだが、最近は出番が少ないとのこと。

NJP
 NJPとVixen

 私たちの世代では最高峰の赤道儀の一つであったNJPにC11を載せてリモートで…ゆる天から見ると「なんとも羨ましい」。

 最後に拝見したのは、小谷先生一番のお勧め「電視観望」システムである。
 先ほどアイスコーヒーを戴きながら、その近くに置いてある赤い赤道儀にコンパクトな赤いC−MOSカメラ、見慣れないシステムが気になっていた。それが、小谷先生一押しの「電視観望」システムであった。

NJP
 デジタル観望用システム

  赤道儀は iOptron製 CEM40 or 40EC or 40G、鏡筒は 口径9.5cmのコーワ社 プロミナー 標準キット+TX07(標準キットだけで500mm F5.6、TX07に取り換えて350mm F3.9)カメラ用レンズで約20万円、C-MOSカメラ ZWO社製 ASI2600

 シンプルでオシャレに見えて中身は凄い!という、これ見かけと性能のギャップが違いすぎるシステムであった。このシステムによる作品が、恐らく表紙になっていることと思います。

 約100分お邪魔して帰途についたが、予想以上に専門的で、強い刺激を受けることができた。羨望鏡を見続けた訪問であった。

 
 
【参考】
※1 キャビネ:120×165mm 別称「カビネ」、2L=大キャビネ:130×180mm、B6:128×182mm
   2Lをキャビネやカビネと呼んでいる人も多い。
※2 四切:254×305mm 六切:203×305mm、B5:182×257mm、A4:210×297mm
   最近はインクジェットプリントも増え、従来の業界サイズが消えるのでは、と心配の声も聞く。


   2021年 雨が降り続く葉月


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