<速報> 「失われたポンス・ガンバール彗星」再発見か!?
         
                               上原 貞治
 
  周期彗星と見られているにもかかわらず、1827年に発見されて以来、今日まで再出現が確認されていなかった「失われた大物周期彗星」C/1827 M1 ポンス・ガンバール彗星(Pons-Gambart)が再発見されたもようである。なお、この彗星については、本会誌「銀河鉄道」WWW版第32号及び第33号(2010)で、「失われたポンス・ガンバール彗星(上)(下)」として詳述したので、そちらをご参照いただきたい。
 
 このたびポンス・ガンバール彗星とおぼしき天体が、観測衛星SWAN/SOHOが11月に撮影した画像から発見された。そして、M. Meyerによってこの新天体C/2012 V4彗星が1827年に観測されて以来行方不明になっていたポンス・ガンバール彗星である可能性を指摘した。それ以降、観測と軌道計算が行われたが、12月23日までには2天体の同一性についてまだ決着はついていない。彗星C/2012 V4には今のところ名称が付けられていない。ポンス・ガンバール彗星であることが最終的に確認されるまで命名はされないものと思われる。
 
 軌道については、現在のところ、今回の出現がポンス・ガンバール彗星の1827年以来の初回帰(周期約185年)とするのが、もっとも観測の再現がよいそうである。そうであるならば、ずっと言われていた周期約60年というのは1827年の観測の誤差によるもので、上記の私の記事による様々な推定は灰燼に帰す可能性が高い。ただ、1110年に出現した彗星がポンス・ガンバールである可能性は十分に残っていると思う。いずれにしても、今後の観測で詳細の軌道が判明すれば、これらの同一性は決着がつくはずで、それについては、次号以降でお知らせしたい。
 
 今、急がれるのは、このポンス・ガンバール彗星と考えられる彗星の観測である。できれば、自分の目でぜひ観測したいものである。私が思うには、C/2012 V4 は8割がたポンス・ガンバール彗星と考えてよいであろうから、とりあえず見る努力をするのがよいだろう。とにかく、この彗星は2013年1月下旬に日本から明け方の東の空に観測できるようになるので、下に、IAUC(MPEC-2012X14)による位置予報を掲載する。予報では光度が12〜13程度になっているが、実際には9〜10等になる可能性がある。最新の情報はwebであたられたい。これがポンス・ガンバール彗星の回帰であるとしたら、残念ながら今回は北半球での観測に適した季節には戻ってこなかったことになる。次回は180年後になる。
 
Ephemeris for C/2012 V4   IAUC(MPEC-2012X14)による(2012.12.24採取)
Date  TT  R. A. (2000) Decl.   Delta   r   Elong. Phase  m1  m2
2013 01 15  18 42 30.4 -03 22 12  1.7608 0.9468  23.7  24.7 12.5
2013 01 16  18 41 51.3 -02 53 57  1.7564 0.9562  24.7  25.5 12.5
2013 01 17  18 41 12.0 -02 25 35  1.7516 0.9659  25.8  26.3 12.6
2013 01 18  18 40 32.5 -01 57 04  1.7464 0.9758  26.9  27.1 12.6
2013 01 19  18 39 52.8 -01 28 22  1.7408 0.9859  27.9  27.9 12.6
2013 01 20  18 39 12.9 -00 59 28  1.7348 0.9962  29.0  28.6 12.7
2013 01 21  18 38 32.6 -00 30 22  1.7284 1.0067  30.1  29.4 12.7
2013 01 22  18 37 52.0 -00 01 02  1.7216 1.0173  31.2  30.1 12.8
2013 01 23  18 37 10.9 +00 28 34  1.7145 1.0281  32.4  30.8 12.8
2013 01 24  18 36 29.4 +00 58 27  1.7070 1.0391  33.5  31.5 12.8
2013 01 25  18 35 47.3 +01 28 37  1.6991 1.0502  34.6  32.2 12.9
2013 01 26  18 35 04.6 +01 59 07  1.6910 1.0615  35.8  32.8 12.9
2013 01 27  18 34 21.2 +02 29 57  1.6825 1.0728  36.9  33.5 12.9
2013 01 28  18 33 37.0 +03 01 10  1.6737 1.0844  38.1  34.1 13.0
2013 01 29  18 32 52.0 +03 32 46  1.6646 1.0960  39.2  34.6 13.0
2013 01 30  18 32 06.1 +04 04 46  1.6552 1.1077  40.4  35.2 13.0
2013 01 31  18 31 19.3 +04 37 13  1.6456 1.1196  41.6  35.7 13.1
 

今号表紙に戻る