「ダークマター」とは何か(第2回)
上原 貞治
 
3.ダークマターについてわかっていること
 前回の第1回は、「ダークマター」の定義について概要を述べましたが、今回は、ダークマターについて、これまでの研究からわかっていることを紹介します。
 
3.1 ダークマターの存在比
 図1の円グラフを見てください。これは、ネットや参考書でよく見られるダークマターの存在比です。ここでは、ネット上の『天文学辞典』(日本天文学会)に引用されているNASAとESAのグラフから数値データを取りました。
 ここで重要なことが2つあります。1つは、ダークマターの存在比がある程度正確にわかっていて、「通常の物質」の5倍程度もあるということです。我々が知っている物質より、ダークマターのほうがずっと多く存在するのです。もう1つは、前回も注目しましたように、ダークマターに相対する「ダークマターでない」物質というのが「通常の物質」であるということです。「見える物質」ではありません。通常の物質で見えない物質(発する光が弱く観測できていない物質など)は、ダークマターのほうではなく「通常の物質」のほうに集計されているということになります。それでもなお、ダークマターのほうが圧倒的に多いのです。
 ここで「通常の物質」とはなにか、という疑問が生じるでしょうが、それは天文学辞典が引用するNASAのデータのグラフに答えがあります。つまり「通常の物質=原子」ということです。私たちが学校で習う「原子」で出来ている物質ということです。原子は、複数の種類の粒子、つまり、電子、原子核、あるいは、イオン、陽子、中性子などに分解できます。復習として、その成り立ちを図2に示しておきます。{・・・,・・・}は、数学の集合論で使う要素の列記の記法で、こういうふうに分解可能だという意味だと思ってください。
 

図1:ダークマターなどの存在比
 

図2:通常の物質〜原子でできている物を、要素に分解すると・・・こうなる。 (s)は、複数のsで、複数個あっても(場合によっては0個でも)よいことを意味する。
 
 
 
3.2 ダークエネルギーと時空間のエネルギー
 前回、ダークマターとダークエネルギーは別ものなのでダークエネルギーには触れない、と書きましたが、両者の分量比が出てきたので、この区別をある程度はっきりしておかないと意味がないでしょうから、ここで両者の区別を述べておきます。
 前回も述べましたが、ダークマターというのは、宇宙空間にある「質量」(の一部)です。つまり、モノ(物質)の質量で、モノ自身は今のところ見えませんので、その量は、それが及ぼす万有引力から推定された質量です。いっぽう、ダークエネルギーは、質量以外のエネルギーで、おもに宇宙の膨張を担っているエネルギーということになっています。天文学者ハッブルが銀河の観測で発見したという宇宙膨張です。宇宙の中に質量がある物質が多く存在するなら、それらは万有引力で引き合って、やがて一カ所に固まってしまいそうなものですが、宇宙は現在、膨張しています。しかも、加速的に膨張していて、将来も収縮する見込みはないといいます。ということは、宇宙空間自体に、張力というか伸開力のようなものがあり(バネや丸めたポリ袋のような)、これを空間にエネルギーが溜め込まれているとみなすのです。
 なぜ、ダークエネルギーの「エネルギー」量が、通常の物質やダークマターの「質量」と、ダイレクトに比較できるのかという疑問があるでしょう。これは、アインシュタインの特殊相対性理論で、エネルギーと質量は、E=mc2の式で互いに換算できるからです。一定の(十分大きい)宇宙空間の体積を考え、その中にある質量をエネルギーに換算して、エネルギーの大きさ同士で比を取るのです。ここで、質量エネルギーは、重力に起因する「位置エネルギー」だけでなく、下で述べるようにすべての種類の力に起因するエネルギーの総和になっています。言い換えれば、物理学でいう慣性質量(運動量保存則で出てくる質量)に対するmc2のエネルギーの意味です。
 時空間のエネルギーについて、もう少し説明を加えます。アインシュタインの一般相対性理論によりますと、重力は時空間のゆがみに起因し、ゆがみは時空間内のエネルギーに起因します。質量エネルギーによる万有引力もその一種ですが、一般相対論では、単にエネルギー値に比例して時空が「傾斜」して引力が働くというのではなく、エネルギーも時空間のゆがみも全体として「4元テンソル」という4×4の行列のかたちになっていて、力も引力だけでなく、物体の形状をひずませる応力のようなものも含まれています。ただし、現在の定説では、宇宙の膨張は、一般相対性理論のオリジナルの式には含まれておらず、アインシュタインが宇宙の収縮を避けるために「宇宙方程式」にあとから導入した「宇宙項」とよばれているもので説明されています。宇宙項の導入は、アインシュタインには不本意であったようですが、一般的には存在してもよい成分で、観測に合わせるために現在はそれを認めるのが多数説となっています。さらに、現代の我々が一般相対性理論を拡張してよいとすると、第2の重力、たとえば「スカラー」(各時空間点に1個の数値が対応する)や「ベクトル」(各時空間点に時空方向に対応した4個の数値が対応する)の重力を導入することができ、そういうものがあれば、それも「ダークエネルギー」に分類されるのかもしれませんし、それで、宇宙膨張が説明できるのかもしれません。宇宙の各時空間点には、未知の力や未知の構造のエネルギーが溜め込まれていて、それが宇宙の膨張を引き起こしているということでしょう。
 上でちょっと触れましたが、実をいうと、通常のモノの質量(陽子や電子の質量)も、おそらくはダークマターの質量も、単なる重力源ではなく、素粒子(原子を構成する物質)の間に働く力(電磁気力、弱い力、強い力がよく知られています)の働きによって、時空間の狭い部分にエネルギーが溜め込まれたものです。電池や原子力はこのモノの内部に溜め込まれたエネルギーを部分的に引き出して利用しています。この点では、ダークマターとダークエネルギーに差はないことになりそうです。だから、ダークマターとダークエネルギーの区別を考える際は、エネルギーの根源まで深く考えるとわけがわからなくなりますので、単純に、モノの存在vs宇宙膨張、と切り分けるのがわかりやすいと思います。
 
3.3「見えにくい通常の物質」の観測
 以上で、ダークエネルギーの説明は十分としまして、以下では、ダークエネルギーは切り捨てまして、改めてダークエネルギーを除外した比率の円グラフをつくると図3のようになります。
 

図3:通常の物質とダークマターの存在比
 
 ここで、通常の物質でできていて見えない天体をどうやって測定したかということが問題になります。見えない天体というと、光らない天体、例えば暗黒星雲とか惑星とかということになるでしょうか? でも、暗黒星雲や惑星を見えないと言ってしまうのは抵抗がありませんか? 暗黒星雲は背景に恒星の集団や光る星雲(散光星雲)があれば立派に見えます。天文アマチュアの撮った写真でも馬頭星雲など実にくっきり見えます。天の川にある暗黒星雲は、肉眼でも見え、望遠鏡が発明される以前から知られていました。惑星だって、太陽系内の惑星は見えますし、その総重量は推計されています。他の恒星の近くにある惑星も、恒星面経過を使った明るさの変化で、発見されています。ということで、星雲や惑星の分量は見て、見積もることが可能です。見えない部分はそれなりに推定します。太陽系の惑星、小惑星の質量は、全部足しても太陽よりはずっと軽いということなので、他の恒星系についても、惑星質量の寄与を心配する人はそれほどいないでしょう。
 厄介なのは、恒星間空間にある比較的小さめの恒星です。「ほとんど光らない恒星」と言ってもいいですし、恒星と惑星の中間程度の天体と言ってもいいでしょう。「褐色矮星」とも呼ばれています。褐色というのは、そんなに光らず、せいぜい赤外線を出す程度、というイメージです。恒星には、主系列星といって、温度が高い(放射する波長帯が短い)ほど質量が大きいという傾向にあるものがいちばん多いです。その中でも特に色が赤くて(比較的低温で)比較的小さい赤色矮星が多いのです。だから、赤色矮星よりも温度が低くサイズも小さい恒星(褐色矮星)が膨大な量ある可能性があります。こういう、あまり光らなくて大きさが中堅以下の天体をMACHO(マッチョ? 質量を持つコンパクトハロー天体)と呼んで、これの探索が1990年代以降、続けられてきました。ハローというのは、銀河の内部とその周辺(銀河域の球体の領域全体)に広く存在するという意味です。サイズが小さくても質量が小さくても、膨大な量があれば、総量では、「ダークマター」の主成分になる可能性があります。暗黒星雲は一定の広がりがあるので、背景に恒星群があると黒く見えますし、惑星も親の恒星の前面を通ると減光が見えますが、遠くにボツンと孤立してある小さい暗い星は、背景天体が乏しく観測できる確率がぐっと減ります。
 ところが、褐色矮星などのMACHOは通常の物質で出来ていますので、上で定義したダークマターではありません。それで、「ダークマター」とは区別して、「バリオニック・ダークマター」と呼んでいます。「バリオニック」というのは、陽子と中性子でできているという意味です。図2にあるように、陽子と中性子が合体したモノが原子核で、原子核は原子の質量の大部分を担っていますので、「バリオニック・ダークマター」は、「原子のダークマター」の意味と考えてよろしいです。
 
3.4 MACHOの探索とビッグバンモデル
 1990年代に、MACHOの徹底的な探索観測に先行して、ビッグバン宇宙論を利用した元素合成の理論的研究が進展しました。これは、宇宙の始まりの時、宇宙が膨張しながら冷えていって、まず、陽子、中性子がつくられ、その後、陽子と中性子が合体して、重陽子(重水素原子核)、ヘリウム・・・のような軽い原子核が生成されたという理論です。宇宙膨張が進むと、元素合成は一旦止まりますが、こんどは恒星の中に物質が集まって、そこで核融合反応が起こることにより、さらなるヘリウムやヘリウムより重い原子核(リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素・・・)の合成へと進みます。この一連の流れを、知られている原子核の反応確率などを使って、シミュレーション計算してみますと、シミュレーションと現実は、けっこう良く合います。そのため、宇宙の初期に陽子と中性子が想定よりたくさん(バリオニック・ダークマターのために)あったと仮定すると、こんどは元素合成が現実より進みすぎて、現在の観測と比べて重水素とヘリウムの比率が合わなくなるという問題が生じました。初期に物質が多いと、重水素が減ってヘリウムが増えることになります。つまり、MACHOがダークマター中にたくさんあっては、ビッグバンの元素合成の計算者にとって「まずい」のです。それで、この計算をもって、「バリオニック・ダークマターは存在しないことがわかった」と主張する人が出ました。しかし、これは実際にMACHOの量を「測定」したものではありません。ビッグバンの元素合成の計算が現実に照らし合わせて正しいと信じた場合の話です。
 それで、その後も、MACHOの直接観測が粘り強く続けられています。2000年代以降は、さまざまな方法で探索が続けられました。赤外線を発するものは、赤外線望遠鏡で探しますし、それでも見えないものは、明るい恒星の前を通る掩蔽現象で探します。ただし、これらは、MACHOのサイズが小さいから簡単ではありません。それから、MACHOの探索には重力も使えます。重力で背景の恒星からの光が曲がる「重力マイクロレンズ効果」を捕らえればよいのです。MACHOの近くで光が曲がると背後の恒星の明るさが変化します。重力の効果では、普通の物質か未知の物質かは区別がつかないのですが、MACHOは木星と太陽の間のサイズの天体であることが前提なので、その範囲では、光度変化の様子からわかります。結果として、そのようなMACHOは、ダークマターの比率に大きく影響するほどには存在しないということが現在までにわかっています。重力による観測であっても、量が少ないということがわかれば、MACHOを排除する情報としては使えますので、結果オーライになります。
 
3.5 通常の物質は本当に見えないのか?
 本節の最後に、私からツッコミ的な指摘をしたいと思います。ダークマター=暗黒物質と言いますが、常識でも、いわゆる「暗黒」なるものは実は見えるのです。光を吸収するから後ろから照らせば、影として見えますね。また、光を吸収するものは温度を上げれば、今度は光を発するので見えます。原子というものは、本質的に光を反射し、吸収し、放射することは、化学や物理の知識でご存じだと思います。エネルギー移行を含めた「可逆反応」というのが、物理学、化学では原則です。これは、本質的には、原子の中にある電子が電荷を持っていて、光に感じるからです。
 また、陽子や中性子も、光に感じます。陽子と原子核は電子ほど光に感じませんが、電荷を持っているので、電子そのものを陽子や原子核の近くに通しますと(たとえば電子ビームを使って)電子が電磁気力で曲げられるので「見え」ます。中性子は電気的に中性なので、ちょっと見にくいのですが、内部にクォーク(図2)という荷電粒子を持っていますので、エネルギーの高い光(ガンマ線)では見えます。
 「闇夜のカラス」と言いますが、夜が明ければ、カラスはよく見えます。また、夜が明けなくても、カラスが木に止まっていたり、道路にいたりしますと、棒で叩けばわかります。つまり、通常の物質は、見えなくても、光や物質に「物理的」に感じるのです。そのような、光と物質粒子と物質との相互作用を図4に示しました。通常の物質(図4左)はこういう意味で、「見える」のです。だから、本当に見えないものは、「暗黒」というよりは「透明」であるはずです。光はもとより、いかなる物質も素通りして、ぶつかっても何も感じない、天下御免の「透明人間」のような物でないといけません。未知の物質でできた「ダークマター」は、その意味では、「透明物質(トランスペアレントマター)」と名付けた方がよかったかもしれないと思います。今さら、名前を変えることは提案はしませんが、読者の皆様には「透明」のイメージ(ぶつかっても何も感じず通り抜けてしまうタイプの)を持っていただくのが、以後のダークマターの説明と議論にはありがたいです(図4右)。原子でできていないダークマターを捕まえるには、そんな透明人間を捕まえるくらいの心積もりが必要だからです。
 
 

図4:「暗黒」の雲(左)と「透明」の雲(右)のイメージ。波線は光を、実線は電子や陽子などの荷電粒子を表す。
 
4.「ダークマター」の実体を探す
4.1 「グレーゾーン」の物質
 さて、これから後は、通常の物質でないダークマターの候補をあたるわけですが、通常でないからといってすべてが未知の物質というわけではないありません。何ごとにも「グレーゾーン」の住人というのがいるもので、通常ではなくても、それなりにいることやその素性が、怪しいながらもわかっているものもあるのです。そこで出てくるのが、「ブラックホール」と「ニュートリノ」です。
 一般の人で、ブラックホールとニュートリノを通常の物質だと思う人はまずいないと思います。しかし、ブラックホールが超新星爆発を起こした恒星の残骸として作られることを考えますと、ブラックホールは、通常の物質から生成されたことになります。ただ、ブラックホールになってしまうと、内部を窺うことが出来なくなり、中身の議論さえ無意味になりますので、原子で出来ているとは言えなくなります。また、ニュートリノも原子の構成要素とは言えませんが、ニュートリノはおもに原子核のベータ崩壊から発生するものであることを考えると、原子から当然に生まれるものということができます。だから、こ両者は、通常の物質から作られた通常でない物質と言えるでしょう。また、実際、ブラックホールは、重力レンズや周辺の物質からのX線の放出で観測可能ですし、太陽や超新星からのニュートリノも観測されていて、恒星の進化のモデル計算と一致しています。人間が作った原子炉や加速器から発生されるニュートリノは、より簡単に検出できます。そのような発生源の機構を考えると、このような宇宙にあるブラックホールとニュートリノの総質量は、知られている光る恒星の総質量のごくごく一部が転化したものなので、図3のダークマターの多くの部分を占める可能性はありません。
 では、恒星のなれの果てでないブラックホールとニュートリノがあったらどうなるでしょうか。宇宙の初めのビッグバンのあと、恒星が出来る前にブラックホールとニュートリノがパパッと生成されたら、どうなるでしょうか。実際、ビッグバンの状況を考えると、そこで生成された可能性は大いにあります。また、その総量を理論的に予想することは、ビッグバンの比較的早期、元素合成が進み出す以前のことになりますので、簡単ではありません。こういう「原始ブラックホール」「原始ニュートリノ」の量はどうやって見積もるのでしょうか。
 「原始ブラックホール」が宇宙に大量にあったとして、それらは観測可能でしょうか。恒星に近い質量のあるブラックホールは、MACHOと同様に重力マイクロレンズ効果の方法で測定できそうですが、原始ブラックホールは、銀河内ではなく銀河間の広い空間にあると思われるので、探索の効率は悪くなります。それでも、ブラックホールは完全に真っ暗ではなく、ホーキングの理論によって量子ゆらぎによって蒸発すると言われています。その場合は、ブラックホールからはガンマ線などが放出され、観測される可能性はあります。しかし、蒸発しない「極小型ブラックホール」(1個が1000トンクラス。質量は中くらいのビルくらいだが、サイズは原子よりも小さいという)も考えられ、この程度のブラックホールを検知することは非常に難しいと言われています。周辺の重力が極めて弱いので、光を曲げたり物質をどんどん吸い込むということもありません。1000トンの質量があっても、あまりに小さいので、何かを引きつける間もなくさっさと物質を通り抜け、誰も気がつかないことになります。このサイズのブラックホールが宇宙の最初に出来て蒸発せずに残っているのであれば、これは、ダークマターの候補となります。
 次に「原始ニュートリノ」ですが、ニュートリノにわずかながら質量があることは、「ニュートリノ振動」の測定によって確認されました。これを最初に確実に確認したのは、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノの観測で、これによって、梶田隆章氏が2015年のノーベル物理学賞を受賞しました。同時受賞のマクドナルド氏は、太陽ニュートリノの検出の特徴がニュートリノ振動で解けることを観測で確認しました。ニュートリノが時間とともに振動するということは、ニュートリノの質量がゼロではないということを意味します。しかし、今のところ、ニュートリノの正確な質量は測定されていません。電子よりもはるかに軽いことはわかっています。電子の質量の100万分の1くらいが非常に大雑把な予想値です。現在までに知られているもっとも軽い物質がニュートリノです(光子の質量はゼロですが、光は物質とはいいません)。
 でも、このくらいニュートリノが軽いと、ニュートリノはちょうど光のように振る舞い、光速で空間を飛び、いくら宇宙の初めに大量のニュートリノができたとしても、そこの空間で、電子との間で輻射平衡という現象が起こり、エネルギー密度が決まってしまいます。これは、宇宙背景放射での光(マイクロ波)と同じ事情です。あるいは、熱い物体の表面の温度で放射エネルギーが決まってしまう「シュテファン・ボルツマンの法則」と同じ事情です。そういうことから、こういう原始ニュートリノは、「1.9K背景ニュートリノ」とも呼ばれます(Kは絶対温度の単位ケルビン)。結論を言うと、背景ニュートリノの総質量あるいはエネルギー密度は、物質の質量と比べてずっと小さく、ダークマターへの寄与として無視できる量といわれています。もっとも、背景ニュートリノは、理論的に予測されているだけで、直接観測した人はいません。宇宙膨張とともに冷えてエネルギーが低くなったニュートリノは、本当に「透明」で、大量にあったとしても、捕らえられる確率が極端に小さいからです。
 理論的には、原始ニュートリノがあったとしても、その寄与は無視できる程度です。また、素粒子の標準理論では、ニュートリノは、クォークや電子と兄弟である物質粒子に分類されるので、ビッグバンの時にそれだけが大量の個数生成されるメカニズムはありません。ただ、質量の大きい新種のニュートリノ(「ヘビーニュートリノ」)が宇宙初期に生成されて今も残っているとすると話は別です。そういう未知の新種のニュートリノについては、新素粒子のダークマター候補の一種として、次回以降に議論したいと思います。
 
 次回は、透明に近くて捕まえにくい新素粒子のダークマター候補の実際的な捕まえ方と、その存在可能性と探索方法をサポートする理論について取り上げます。
 
 (つづく)

今号表紙に戻る