2020年 木星と土星の会合を見よう
上原 貞治
 
 
今年2020年は20年ぶりに木星と土星の会合が見られる年です。今から4年前に発行した「銀河鉄道」 WWW版51号に掲載した「偉大なる天体の周期(第6回)」でこの現象をご紹介しました。そこには、以下のように書きました。
 
 と聞いても、木星と土星の会合は特に見た覚えもないし、世間が騒いだこともないし、見ようと思ったことすらなかったという人がほとんどではないだろうか。筆者も見た記憶が何とかある程度で、感激どころか具体的な感想の記憶すらない。(中略)それは、はっきり言って、珍しいだけで見栄えのしない現象だからである。
 
  えらく粗末な扱いでしたが、実は、今年2020年の木星と土星の会合に限るとそれなりに見栄えがするのです。それで、前述の記事でも、今年の現象の宣伝を「おまけ・その2」でご紹介しました。ここで、再度、直前の宣伝をさせていただきます。東京2020は延期になっても、木星と土星の会合は延期になりません。
 
 秋から初冬の夕方の空で、木星と土星が毎夜だんだん近づいていき、最後にはかなり接近するところが3〜4カ月にわたって肉眼で楽しめます。ただ一瞬だけの現象ではないので、1〜2週間見飛ばしても問題ありません。でも、最後の最接近の日、12月21日が近づいてきたら、出来るだけ毎夜、晴れる限りは見逃さないようにしていただきたいです。 
 木星と土星の会合は、なんせ20年周期ですから、頑張っても一生に4回くらいしか見られないものです。しかも、前回と次回は、太陽の方向に近い時に接近した(する)ので、今回は生涯まれに見るチャンスとなります。別に、一生見逃しても後悔するほどの現象ではないですが、それでも一生に一度くらい注目してみる価値はあるでしょう。
 
 さて、2020年の春以来、木星と土星は、すでにいて座で接近しています。木星と土星の南中はだんだん早くなり、最後に夕方の西空になって、12月21日に(見かけ上)両惑星は最接近します。木星と土星では、木星のほうが地球に近い関係で、9月始めまでは、木星は土星から少しずつですが離れていっています。 しかし、9月中旬以降は12月の最接近を目指し、木星はほぼ一直線に土星に近づいていきます。
 
 夕方の南から南西の空、それほど高くない見やすい高さに両惑星は見られます。いて座とやぎ座の境界付近になりますが、木星と土星のほうが明るいので、これらの星座の知識は不要です。木星は−2等ととても明るいです。土星はこれより暗いですが、それでも0等の明るい星です。2つ並んでいますから、相乗効果でさらに目立ちます。月が近くに来ても問題なく見えます。そして、毎夜、両星は(同時刻には)だんだん西によって行き、最接近の12月21日を迎えます。この頃は、日没後の短い時間しか見られなくなり、高度も低くなって見づらくなりますが、そうなる前の見やすいうちに何晩も見て見慣れておきますと、素早く見つけられて、特に困難はないはずです。
 
 夕空の2つの星が近づいていくのを見るだけの話ですから、特に図解もなにも必要ないと思いますが、下に両惑星の相対位置の図を載せておきます。こんなものを見るより、晴れれば夜空を見ていただくほうが早いと思います。

 
 図は、土星の方向を基準にとって(つまり土星を固定して)、木星がどのように近づいてくるかを示したものです。木星は9月中旬から12月21日まで、土星の西側からほぼ一直線に土星に近づいていきます。お互いの方向関係は、南中時にはこの図のようになりますが、東空または西空にある時は、それぞれ、これより左または右に傾いたかっこうになりますのでご注意下さい。横軸の赤経差の1目盛りは4m、縦軸の赤緯差の1目盛りは1°です。比較の目安として、オリオンの三つ星の右端と左端の星は、赤経差が9m、赤緯差が1.7°くらいです。12月に入る頃にオリオンの三つ星に匹敵する接近になります。図中の土星と木星の大きさは、ただのシンボルで、実際の見かけの大きさとは関係ありません。便宜上、毎日の日本時間21時の位置をプロットしていますが、11月以降は21時にはもう西に沈みますので、18時頃空が暗くなったら早めに観察して下さるようお願いします。


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