反射望遠鏡の主鏡自作への夢
                                                  福井雅之
 
 私がこれまで銀河鉄道に寄稿した写真のほとんどはミザールのニュートン式12cm反射望遠鏡で撮影したものです。反射望遠鏡の性能を左右するのは何と言っても主鏡の鏡面精度。大口径で高精度な鏡で観測をしたいというのが私だけでなく天文ファン共通の願いであることは間違いないところです。先日知人からもらった“天体望遠鏡の工作百科(地人書館)−昭和52年初版−”の中の“これだけ読めば反射凹面鏡磨きはマスターできる!”という記事に接し、「そういえば鏡は自作できるもの」ということを思い出すきっかけになりました。著者は“苗村鏡”で有名な苗村敬夫氏。この本のほぼ半分の53ページにわたり10〜15cmの鏡面磨きの方法が詳細に解説されています。
 
T 準備する材料とF数の決定
U 砂ずり(荒ずり・中ずり・仕上げずり)
V 研磨…準備(ピッチ盤作り)
W 研磨(みがき)
X 鏡面のテスト(フーコーテスト)
Y 整形
Z 放物面
[ 各面の修正方法
\ 収差測定
] 鏡面精度
 
 特に“X 鏡面のテスト”以降の解説は「せっかく作るのだから精度の高い鏡面に仕上げてほしい」という著者の気持ちがひしひし伝わってきます。最後の“] 鏡面精度”では分解能(ドーズの限界)・集光力・極限等級など計算式を使って実に細かく解説されています。この記事の冒頭に「“鏡を自作する”ことのねらいは、望遠鏡が既製品より安く入手できるということよりも、製作の過程を通じて光学系についての知識や、望遠鏡の良否を見分ける力を養えることにあります。」と記述されているのも著者の気持ちがあらわれていると思います。当時はこのような解説本がいくつかあったので、鏡の自作にチャレンジされた方も多かったのではないでしょうか。自分で磨いた鏡で見る惑星・彗星や星雲は格別のものがあると思います。
 40年前に発行されたこの本に接し、自作好きの私としても定年後の時間を使ってこの“鏡磨き”をやってみたい気持ちになりました。どうせやるなら30cmくらいでチャレンジできたらと思いますがいきなりの大口径は失敗するのでしょうね。Web検索すると磨き途中であきらめ高級コースターになっている方もおられるようで結構難易度の高い自作の部類であると思います。結局市販の望遠鏡を買ってオートガイダーに挑戦するのが無難か。定年後の趣味の過ごし方も含めいろいろ悩んでみたいと思います。
 

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