私の天文グッズコレクション(第3回 早見盤 編)
 
上原 貞治
 
 3回目は、星座早見など「○○(天体)早見盤」を紹介させていただきます。
 
1.星座早見(STAR-DISC) 
まずは、現在使っている星座早見です。渡辺教具製の普及品です。黄道12星座だけ星座絵が描かれているのは、星座占いから星座観察に入門する初心ユーザー を意識したのでしょうか。 わりピンで留めただけの簡単な作りで、高級天文グッズを製作している渡辺教具の中でもっとも安価な商品の一つだと思います。私の持っているのは、研究プロジェクトを公費で支援しているJST(科学技術振興機構)の公開イベントでもらったもので、渡辺教具のロゴとともにJSTのシールが貼ってあるのが権威の相乗効果でブランド価値を高めていると思っています。
 
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2.星座早見表
 この品物は、今連載2回目の登場です。といっても、下の写真は初めての紹介です。実はこれは、当連載第1回でご紹介した「携帯用日時計」の 裏側です。昼は日時計として使い、夜は星座早見、それに方位磁石もついているということで、これさえ持って歩けばGPS付携帯端末が故障してもパーフェクト、と心強くなります。大きさもペンよりも小さいくらいで携行にも便利です。が、よくよく見るとおかしなところがあります。
 まず、タイトルは「星座早見表」。「表」はちょっとおかしいのじゃないでしょうかね。それから窓の楕円が扁平すぎて、ケンタウルス座 のα、βが余裕で見え、カシオペア座が周極しません。どうやら北緯25度あたり(沖縄本島あたり)の緯度用のものらしいです。でも、これは日本製らしく、TOKYO SAILという会社が売っている物です。反対面の日時計は、日本の本州より高緯度用のものでした。昼と夜でまったく違う場所で使えというのでしょうか。総合的に考えると、どうやらこの商品は天文知識のあまりない人が企画製作したのではないかと思います。
 
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3.星座早見(おわん型金属製)
 この星座早見は私が現在持っている中でもっとも古い物です。私が星座観察に常用した物としては2個目です。(1個目は星座の勉強のた めに使いすぎて、2年ほどで壊れてしまいました。)本品は星座早見の名品と言ってもいいでしょう。湾曲した金属面に星が描かれています。これ を買ったのは、1970年代初め頃で、もう40年以上手元に置いています。さすがに錆びてきて周囲の日付の文字が読めなくなってしまいまし た。私にとって思い出深い品で、いろいろと書き込みや汚れがあります。
 写真でも読めるように「8日」と書かれているのは、1972年10月8日のジャコビニ流星雨の夜のことで、もともとはその日に立てた 撮影計画の写野が描かれていました。また、数本の曲線は、昨年まで住んでいた住宅のベランダから観測できる空の範囲を示すもので、書き込んだ のは1990年代ではないかと思います。そして、2つほど焦げのあとがあるのは、私が子どもの頃、お酒を飲みに来た近所のおじさんが、傍らに あったこの星座早見を灰皿にして焦がしてしまった痕です。なんせお碗型の金属製なので本当に灰皿だと思ったのかもしれません。おじさんが帰ったあとに気がついて、私は特に怒りませんでしたが、私の母がけっこう怒っていたのがよい思い出になっています。
 なお、渡辺教具からは、今でも、1.と3.に近い型の星座早見が売り出されていて、現在の価格は、それぞれ550円、1620円です。
 
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4.火星早見盤・木星早見盤
 これは、たいへんめずらしいもので、本会誌の常連の執筆者の福井さんからごく最近いただきました(ありがとうございます)。静岡県函南町の月光天文台で配布されていたのだそうです。どちらも、表面の年号からして、1980年代前半に作られたものでしょうか。火星や木星が見える方向の周期を示すものです。たぶん、月光天文台の関係者の方のオリジナルアイデアだと思います。以下、火星早見盤のほうを中心に説明しますが、両者の仕組みの原理は同じです。
 火星早見盤の仕組みは、火星の公転運動を太陽との相対位置で表したもので、合わせてその時期に観察に適した時間帯もわかります。また、その 年の衝などの日付もおおよそわかるようになっています。星座と違って、火星の見える方向と日付の関係は年によって違うので、まず、西暦年を 使って、表から該当する年の「定数」を得て、それを早見盤にセットして、火星の方向を知ります。
 この盤は、火星の会合周期(2年と50日)を回転盤の全周と表に定数が与えられている周期(2年ごと(偶数年))に、そして、火星接近の 季節が変わる周期(15〜17年)を定数の変化が一巡する周期に反映しています。より詳細は、今号の別記事「偉大なる天体の周期(第4回)」 をご覧下さい。そちらの記事ではこの盤を大いに活用させていただきました。
 

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5.月見盤
 最後のものは、私の自作品です。設計はオリジナルですが、アイデアは小学校の時に学校で配布された教材でした。なんせ幼いときに短期 間使っただけのもので(当時、特に天文に興味はありませんでしたから)細かいところはまったく記憶に残っていませんが、手動の盤の回転で、月 の形と太陽、月の方向が変わっていくことから、大人になってから仕組みを考えて、パソコンの製図ソフトを使って再現してみました。「月見盤」 という命名も私のオリジナルです。
 原理は見ていただくとわかると思いますが、太陽と月の相互位置、月齢、見える方向が再現できます。円盤の大きさの工夫によって、月と 太陽の出没も再現できます(この部分は私のオリジナルかも)。今、ネットを見るに、世間にこれだけのアイデアをすべて入れた商品はないようで す。特に特許というほどの新奇のアイデアではないと思うので、どなたでも大量生産して売り出してもらっても良いのではないかと思います。(儲 かったら我々の同好会に一部を寄付してください)


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 今は、計算、シミュレーションというと、何でもコンピュータのアプリになってしまいましたが、こういう早見盤は、原理を体得するには 圧倒的に優れています。(というか、他人が作ったアプリではプログラムが読めず原理はわかりませんね。)今後も長く生産され使われ続けるので はないでしょうか。

 

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