私が選んだ2022年の天文現象
上原 貞治
今年も例年のごとく2022年のめぼしい天文現象をリストアップしてみました。
下の表を見て下さい。「時」は、おおよその時刻です。本当は、もっと正確な時刻がわかっているのですがここでは省略しています。目安だと思って下さい。実際に観測する際は、もっと詳しい予報をご自分で入手して下さい。
「種別」の意味は以下の通りです。年によってないのもあります。
ast --- 小惑星による恒星の掩蔽(恒星食)
com --- 彗星の観測好期
occ --- 月による星食
pla --- 惑星に関わる現象
S.ecl --- 日食関係
M.ecl --- 月食関係
met --- 流星群
Jsat -- 木星の衛星(第1,2,3,4衛星)同士による食(E)または掩蔽(O)。後のほうが隠される衛星(A:金環、T:皆既、P:部分)
ソースとして、おもに天文年鑑2022(誠文堂新光社)を利用しました。
天文現象は、関東地方で観測に適している現象ということで選びました。これは筆者が現在関東に住んでいるためであります。他の地方に在住の方には申し訳ありません。関西地方(実際には近畿全般)での現象の観測の可否を最終欄に示しました。◎は関西でもほぼ同様に観測できる現象、○は多少条件は異なるものの観測できる現象、×は観測できない現象を示します。ただ1つだけ例外があって、現象名が括弧( )付きで、関西が「のみ」となっている現象がありますが、これは、関東では見られないが関西で見られる現象です。実は、中部・東海地方の一部でも見られます。
日付 |
時刻 |
種別 |
現象 |
評価 |
関西 |
〜1月5日 |
夕方 |
com |
C/2021 A1 レナード彗星 |
*** |
◎ |
1〜2月 |
|
com |
C/2019 L3 アトラス彗星 |
** |
◎ |
1月4日 |
早朝 |
met |
しぶんぎ群 |
*** |
◎ |
3月〜11月 |
|
com |
C/2017 K2 PANSTARRS彗星 |
*** |
◎ |
4〜5月 |
|
com |
C/2021 O3 PANSTARRS彗星 |
*** |
◎ |
4月15日 |
23h |
occ |
γ Virの星食 |
** |
○ |
5月1日 |
早朝 |
pla |
金星と木星の接近 |
** |
◎ |
5月15日 |
19h |
occ |
α2 Virの星食 |
** |
○ |
7月21日 |
23h |
occ |
火星食 |
** |
○ |
8月12〜13日 |
深夜 |
met |
ペルセウス群 |
** |
◎ |
10月8日 |
23h |
ast |
( (258) Tyche による掩蔽 ) |
** |
のみ |
11月〜12月 |
|
pla |
火星接近 |
*** |
◎ |
11月8日 |
18h |
M.ecl |
皆既月食 |
*** |
○ |
11月8日 |
20h |
occ |
天王星食 |
*** |
○ |
11月18日 |
早朝 |
met |
しし群 |
** |
◎ |
12月14〜15日 |
夜 |
met |
ふたご群 |
*** |
◎ |
それでは、**以上のものの一部について、状況を予想してみましょう。
● 今年のしぶんぎ群は、月の状況も極大時刻予想(4日06時)も、日本での観測には最高の条件で、早朝の時間帯での観測に期待が持てます。
●C/2017 K2 PANSTARRS彗星は、4月ごろに予想光度が8等台に入り、それから、夏・秋に向けて、見やすい夏の星座の位置で5〜6等まで増光するとみられています。10月以降がこの彗星にとって太陽に近づく最盛期となりますが、日本からは南に低くなり、観測は徐々に困難となります。
●C/2021 O3 PANSTARRS彗星は、4月末頃まで太陽の近くにあって観測困難ですが、その後、観測できるようになり、はじめのうちは5等級、太陽から離れるに従い、急速に暗くなると予想されています。5月中旬に、北天にはいって周極星となりますので、このあたりが観測好機です。
●5月1日の金星と木星の接近は、早朝の空でとても明るい両星が14' まで接近しますので、見栄えのする美しい景色になるはずです。
●8月のペルセウス座流星群は、満月の夜に当たるので、月明の避けようがないでしょう。
●10月8日は、北近畿地方などで、小惑星(258)Tycheによる、8.9等の恒星の掩蔽が見られます。予想される継続時間は3秒間以下で、つまり、この恒星が一瞬だけ消えるように見えるでしょう。恒星はたて座のM11 の近くにあります。この種の現象を見たことのない人にも好機会と思います。
●11月8日の皆既月食は、夕方の時間帯に始まり、皆既の時間も十分長く、これだけでも好条件の皆既月食ですが、合わせて皆既中に、天王星の星食が起こります。天王星は、月よりもずっと表面輝度が小さいので、普段は月と一緒に眺めるのは困難ですが、今回は、皆既中、あるいは、月食で欠けている部分の近くでの現象になり、望遠鏡を使えば、好条件で、楽に月の近くの天王星が見られるものと予想します。
●12月のふたご座流星群は、やはり月の条件が悪く、観測しづらい状況です。14日は月が昇ってくる前の22時頃までに観測するのが適切と思います。