ペルセウスの流星
                                上原 貞治

 西中筋天文同好会とペルセウス座流星群−−久しぶりの出会いを田中君がもちだされ
たのはちょうど一年前でした。私と田中君とは、一年に一回くらい会っては、あいも変
わらず現在の時勢の評論をしたのち、昔の星空を懐かしんでおったのでした。正確にい
えぱ、そのとさは流星群との出会いということで計画されていたのではなかったかもし
れません。しかし、折りもおり、ペルセウス座流星群の母彗星スウィフト・タットルが、
1992年I2月に地球の軌道を横切り、久々の「観測会」は、同じポイントを地球が
通過する夜、1993年8月11日にセットされたのです。

 梅雨の頃、田中君がなつかしいみんなに葉書を出されましだ。しかし、残念なことに、
今年は大勢の人が多忙であったこと、日がお盆と少しだけずれていたことで、参加を表
明された方が少数で、この観測会は結局開くことができませんでした。準備に努カをし
てくださった方、参加したいと思ってくださった方、気にかけてくださった方、みんな
にお礼とお詫びを申し上げなくてはなりません。それでここでは、それでもやはり「ス
ウィフト・タットルの流星雨」を見るために、田中君と二人で行った、1993年8月
11日夜の観測会について春きたいと思います。当夜は、…晴れました。
 
 台風7号は去り、晴れたり曇ったりしながら天気は回復してゆきましだ。そして、夜
10時から、観測会は、綾部市上杉町の体育館の前で行われました。私は当地に妻の実
家があり盆の帰省をしていたのですが、そこは標高が高いのと川から少し離れているの
で霧がでる可能性が少ないと思われたのです。田中君も学校の関係かその辺の地理に詳
しく、観測会場とすることに決まったのです。

 現場到着時は完全な曇りでしだが、「晴れ時々曇り」という天気予報は信頼できると
思い、夜中には晴れることを確信していました。やがて雲の切れ間にヴェガが現れ、意
外に早く11特15分頃には、白鳥座、ケフェウス座、カシオペア座、と続々と細かい
莫大な星をたたえた星座が姿を現しました。そして、満天の星となったのです。白鳥座
にまだ雲が残っていると思いましたがそれは銀河でした。

 流星は、はじめはちらほら好き勝手な方向に飛んでいましたか、0時過ぎからペルセ
ウス座から飛んでくるように見えるものが連続して現れ、いよいよ流星群本番の期待が
高まりました。深夜ラジオから流れるDJの声、田中君持参のにぎりご飯、三脚の上で
上を向いているカメラ、いずれも高校特代を思い出させてくれるにはじゅうぷんなもの
でした。流星群というものは、輻射点(流星がやってくるように見える方向)がある程
度高くならないと数が増えないものです。それで、秋の星座ペルセウスが中天にのぼっ
てくる2時から4時頃が流星が多く見られるピークだと私たちほ予想していました。

 11特半から0時半までの1時間に、二人で20個程度の流星を数えました。流星は、
連続して2つ流れたかと思えば、また数分出現しないというおきまりのパターンです。
カメラの方向に全く飛ばないので悲観的になった頃、お情けで暗いのが1つそちらに飛
んでくれるというのも流星君のおなじみのやりかたです。私は、21年前、中学3年生
の特に、石原高のグラウンドでやはり同じことをしていた自分を思い出しました。今夜、
上を向いている自分は、あの時の自分と比ぺて全く変わっていない。これは、喜ぷぺき
ことだろうか。でも、不思議に悲しいような気もしました。それは、星以外のことでは、
あまりにも多くの変化が自分にあったからかもしれません。

 流星の数は、次の1時間その次の1時間もたいして増えませんでした。途中で下弦
をやや過ぎた月が、驚くほど北よりの東の空、ペルセウス座からそう遠くないところに
上ってきましたが、運良くその方向だけ雲が居座っていたのでたいした影響はありませ
んでした。2時頃から雲が広がりだし、またしばらく晴れましたが、また全天総曇りと
なり、天気の回復があまり見込めなくなりました。それで、観測会は3時前に終了とな
りました。結局、3時間あまりで二人が見た流星の数は100に達しなかったと思いま
す。まあ、例年並かそれ以下の出現で、これに関しては完全な期待はずれでした。

 でも、私は満足でした。田中君と別れて家に戻り、ソファでぼうっと考えていました。
そして、一つのことを確信しました。21年前と変わらない今夜の自分は、今の自分に
とって喜ぷぺきことかどうかはわからないが、21年前の自分は、21年後にやはりぺ
ルセウス群の流星を見てくれた自分を見て、確実に喜んでくれていると思ったのです。
これは、大変うれしい考えでした。

 4時頃、もう一度家の前にでてみると、雲が切れかけていましだ。そしてまもなく、
また、空は晴れ上がったのです。ペルセウス座はもう見上げるほど高くあがっていまし
たが、すぐに東の空が明るくなりはじめました。20分間くらいで4個の流星を見まし
たが、空全体が明るくなりましたので、家の中に引き上げることにしました。

 ペルセウス座流星群の大出現は、完全な幻に終わりました。しかし、一晩にこんなに
多くの流星を見たのは、間違いなく、高校生の時三岳山で西中筋天文同好会のみんなと、
空を見上げた夜以来のことでした。