2003-2004年の珍しい天文現象
 
                      上原 貞治
 
 2002年の天文現象は、天文同好会のホームページの特別掲載「私が選んだ...」で掲載していますが、ちょっと寂しいようですね。でも、2003、2004年には珍しい天文現象がいくつかあります。来年以降のお楽しみにしておいてもいいのですが、楽しみに待つ期間が長い方がいいでしょうから、ここでご紹介しましょう。
 
2003年
 5月7日 水星の太陽面経過
  太陽の表面を水星が通る現象です。日本全国で見られます。望遠鏡で太陽面を観察しますと(もちろん投影法などの安全な方法を使ってですが)、水星が真っ黒な円盤として太陽面を移動していく様子が見られます。経過の開始は14時12分ごろ(日本時間)です。経過の終了は日没後となり日本からは見られません。
 水星の太陽面経過は、13年に約3回見られる現象です。前回は、1999年でした。次回は2006年11月8日です。
 
 
 8月27日 火星大接近
 火星は2年2カ月毎に地球に接近しますが、火星が楕円軌道を回っているためにその接近距離にはかなり違いが出ます。この接近は、15年または17年に1回起こる最も接近距離の短いもので「大接近」と呼ばれています。接近距離は5580万kmで、地球から見た場合の視直径は、25秒です。これは月の視直径の1/80に対応します。ですから、100倍の望遠鏡で見ると肉眼で見た満月より大きく見えるわけです(残念ながら、実際にはもっと小さな印象しか受けません)。マイナス2.6等くらいになりますので、非常に明るい星(しかも赤い色の星)として夜空に目立つことでしょう。
 
 前回の大接近は、1988年でした。次回の大接近は2018年です。でも、今回はこれらの大接近よりもっと接近します。79年に1回程度のさらに近めの大接近といいます。こんなに近づくのは8月27日前後だけですが、細かいことをいわなければ、8月〜9月いっぱいは、接近した火星を楽しむことができます。
 
2004年
 5月 ニート彗星(C/2001 Q4 (NEAT))地球に接近、大彗星となる?
 2001年8月に発見されたニート彗星が地球に接近します。肉眼で見える明るさになるのではないかと期待されています。彗星の明るさはミズモノで、どのくらい明るくなるかを予想することは困難ですが、この彗星は2004年5月には1〜2等星の明るさになるのではないかと予想されています。これよりも明るいかもしれませんし暗いかもしれませんが、この彗星はそれほど太陽に近づきませんので(近日点距離0.96天文単位)、この予想が大きくはずれる可能性は小さいと思います。
 日本からの観測条件もまずまずです。この彗星は日没後空が暗くなった頃に西空に見られるでしょう。夜が更けていくと西の地平線に沈んでしまいます。5月初めは、南西の空にありますが、まだ高度が低く見にくいでしょう。5月7日以降は、高度が高くなります。毎夜、だんだん北に移動していきます。下旬には、西南西の空高くまで移動します。もっとも明るくなるのは5月の前半で、5月いっぱいは1等から4等くらいで肉眼でも見られるのではないでしょうか。
 
 
6月8日 金星の太陽面経過
  太陽の表面を今度は金星が通ります。日本全国で見られます。望遠鏡で太陽面を観察しますと(もちろん投影法などの安全な方法を使ってですが)、金星が真っ黒な円盤として太陽面を移動していく様子が見られます。日食観察用の減光フィルタを使うと肉眼でも見られるはずです。ただし、1.0くらいの視力が必要かもしれません。経過の開始は14時11分ごろ(日本時間)です。経過の終了は日没後となり日本からは見られません。2003年5月の水星の太陽面経過とほぼ同じ時間経過の状況です。
 
 金星の太陽面経過は、水星のそれよりもずっと珍しい現象です。20世紀中には1回も起こりませんでした。前回は1882年12月6日でした。次回は2012年6月6日です。3回連続日本で見られてラッキーです。