2025彗星ラッシュ4彗星の観測
−レモン彗星・スワン彗星・K1アトラス彗星・3Iアトラス彗星―
福井雅之
1.
はじめに
昨年秋は紫金山アトラス彗星が1等台まで明るくなり大きな話題になりました。望遠鏡を使わずカメラ単体で写真を撮ることができたことから天文ファンのみならず多くの方に彗星の魅力を感じていただけました。あれから1年、今年の秋は肉眼彗星こそなかったもののアマチュアが観測可能な多くの彗星がやってきました。今回紹介する彗星は恒星間天体3Iアトラス彗星を除きオールトの雲からやってきた長周期彗星です。肉眼では見えないことから話題にこそなりませんでしたが、コマの色や尾の出方などそれぞれ特徴があって大いに楽しませてくれました。
今回の観測機材は全てSeestarS50です。9月から11月にかけて撮影した順に紹介させていただきます。


2.
レモン彗星(C/2025 A6)
最初に撮影したのがレモン彗星です。レモン彗星は今年1月にアメリカのレモン山天文台で発見されました。上の軌道図の通り地球接近は近日点手前になります。レモン彗星は接近途中で増光が見られ「もしかしてマイナス等級の大彗星になるかも?」と期待されましたが最大光度は地球接近直後の4等にとどまりました。それでも望遠鏡観測では立派な尾を見せてくれ存分に楽しませてくれました。
夏の終わり、なかなか天候に恵まれず初ショットは近日点通過1.5か月前の9月23日です。以降、最大光度に至るまでの5枚のショットをご覧ください。

3.
スワン彗星(C/2025 R2)
スワン彗星は太陽観測衛星SOHOのSWAN観測装置データから9月11日に発見されました。近日点通過は発見翌日の9月12日、その後地球に近づく10月下旬が見頃となり、夕方の西空に見えるレモン彗星と一緒に観測できることで話題となりました。最初に沈みかけたレモン彗星を撮影してから高度の高いスワン彗星に望遠鏡を向け一晩で二度おいしい彗星観測を楽しんだ方も多かったのではないでしょうか。6等まで明るくなってくれましたが彗星らしい尾が伸びなかったのがちょっぴり残念ではありました。

4.
K1アトラス彗星(C/2025 K1)
昨年の紫金山・アトラス彗星ですっかり有名になった“アトラス”の名称は小惑星地球衝突システム(ATLAS)に由来します。K1アトラス彗星はこの観測の一環で今年5月に発見された彗星です。明るさは最大でも10等でしたが、立派な尾が観測できたことと近日点通過後に核が崩壊したことでも注目された彗星です。早朝の観測しにくい時間帯にもかかわらず多くの天文ファンによって写真が撮られました。

5.
3Iアトラス彗星(0003I)
最後は3Iアトラス彗星です。通算3個目の恒星間天体として小惑星地球衝突システム(ATLAS)が今年7月に発見しました。太陽系が誕生する以前の70億年前から宇宙空間をさまよっている小天体がたまたま太陽の引力に捕捉されたことで我々が目にすることになったものです。恒星間天体の発見1個目オウムアムアはガスの放出がなかったことから人工物ではないかと騒がれましたが、3Iアトラスは中心部からガスを放出しているので彗星に分類されています。このめずらしい来訪者が地球に最接近するのは12月19日。双曲線軌道を描くのでその後は太陽系を離れて二度と戻ってくることはありません。ガスの放出がとらえられないか(尾が出ていないか)長時間露出を試みましたが私の口径5cm Seestarでは彗星特有のはっきりした尾は見えませんでした。

6.
終わりに
天体写真は公転運動など一定の法則での変化はあるものの、同じ被写体を同じ機材で撮影する限り仕上がりがそう大きく変わるものではありません。唯一個々の違った姿やその時々で変化を見せてくれるのが彗星ではないでしょうか?だからこそ彗星は天体写真の中でも根強い人気があるのだと思います。今回、同時期に4つの彗星を追いかけることができ、彗星毎に撮影の仕方や時間を工夫するなど楽しませていただきました。またSirilを使って彗星基準の合成に初挑戦することもできました。ただ彗星到来は運次第、来年以降も肉眼彗星がやってくることに期待します。
最後に私の彗星観測場所を紹介し2025彗星ラッシュの紹介を締めくくりたいと思います。

今回もう一つ「電動フォーカサーの製作(ハード編)」の原稿を書く予定でしたが、設計が間に合わなかったので(ソフト編)含め次号とさせていただきます。