2023年9月〜2024年4月の天文現象の報告
 
                           上原 貞治
 
以下で、"◎>"は、2023, 2024年年頭に西中筋天文同好会のウェブページに出した「私が選んだ2023(2024)年の天文現象」からの引用です。●は私による観測報告です。
 
●前回の報告(「銀河鉄道」WWW版72号)と前号の表紙写真(by福井氏、WWW版73号表紙)で既報ですが、西村彗星(C/2023 P1)を8月下旬から9月まで観測しました。早朝の東の空は低空でしたが、5〜6等で比較的観察しやすく、9月10日まで追跡できました。以後、夕方の西空に移りましたが、こちらはさらに低空で、9月17日に1度だけ20cm反射で確認できました。双眼鏡では10x70をもってしても確認できませんでした。下に、望遠鏡に同架した望遠レンズで撮影した写真を掲げます(写真1)。この時は2等と見積もりました。
 
●11月9日に夕方の西空でレモン彗星(C/2023 H2)を観測しました。7.5等と見ましたが拡散した彗星で、20cmの眼視でも見にくい彗星でした。しかし、短時間で移動が確認できました。これも写真を載せておきます(写真2)
 
◎>12月のふたご座流星群は、13日が新月なので、一晩中、楽しめます。
● 2023年のふたご座群は、14日と15日の夜「薄雲」がけっこう厚くて、収量がかせげないと判断し、断念しました。
 
●1月に、福井さんのご紹介により「プラネタリウム100周年記念事業(日本プラネタリウム協議会)のキャンページ「(1553)小惑星バウアスフェルダの撮影」に参加しました。小惑星 バウアスフェルダは、カール・ツァイスで近代プラネタリウムを創始したバウアスフェルトを記念して命名されたものだそうです。15等星でしたが、何回目かのトライで撮影できました(写真3)。
 
◎>12P/ポンス・ブルックス彗星は、海王星族の大物周期彗星で、4月に3〜4等まで明るくなると期待されますが、夕方の西空低空であまり条件はよくありません。
● 上では条件はあまりよくないと書きましたが、集光の強い彗星で、3月から、低高度の薄明中でも、簡単に双眼鏡で観察できました。頭部は小さいものの、短く幅の広い尾が見えるので彗星らしく見えました。4月に入ってからは悪天候が続きましたが、10日の月と木星との接近の日は低空まで晴れてスリーショットが撮影できました(写真4)。その後、明るくならないまま、高度が低くなり、19日には双眼鏡と望遠レンズでの撮影で彗星像らしきものが少し見えただけで、確認はできませんでした。
                      
◎>13P/オルバース彗星も海王星族の大物周期彗星で、こちらも、7月に夕方の西空で、7等まで明るくなるとみられます。
●4月後半から望遠レンズでの固定撮影と20cm反射での眼視とそれぞれ1度ずつ試みましたが、25日現在、捕らえられていません。低空の減光、ホコリ(黄砂)、薄明、光害の4重苦になっていて、また、彗星も見た目の実効が9等以下なのだと思います。7月までにはまだ時間があるので、今後に希望をつなぎます。
 
                       
●4月27日以降の現象は、次回に送ります。下は写真です。どれも市街地での撮影になっています。光害があるので暗夜でもあまり露出時間が延ばせません。ということなら、彗星や星雲の撮影でも、いっそのこと固定撮影を繰り返しコンポジットしてもいいのではないか、という横着なアイデアを考えました。その成果が、下のレモン彗星と表紙のオリオン座小三つ星の写真です。望遠レンズのカメラの場合、自動追尾を省略するとセットアップは楽になりますが、天体の導入はかえって難しくなり、時短になるかどうかは微妙です。

 

写真1:夕空の西村彗星(C/2023 P1)
2023年9月17日18時25分、露出1/4秒、 自動追尾、5枚コンポジット、
ニコンD5300、望遠ズーム300mm、F5.6、
明るさとコントラストの補正、回転とトリミング
 


写真2:レモン彗星(C/2023 H2)
レモン彗星(C/2023 H2)
2023年11月15日18時22分、露出2.5秒、固定、6枚コンポジット
ニコンD5300、望遠ズーム300mm、F5.6、
明るさとコントラストの補正、トリミング。
右下の明るい2星は、やぎ座α1、α2です。
 


写真3:小惑星(1553)バウアスフェルダ
(日本プラネタリウム協議会のキャンペーン投稿作品)
2024年1月13日3時04分(左)3時38分(右) (以下データ共通)
露出6秒、自動追尾、14枚コンポジット
20cm反射+エクステンダー(f=1500mm)、ニコンD5300
明るさとコントラストのカーブ補正、トリミング。
 


写真4:ポンス・ブルックス彗星(12P/)と月と木星
2024年4月10日19時03分、露出1.6秒、固定
ニコンD5300、望遠ズーム145mm、F5.6、
明るさとコントラストの補正、トリミング。
中央やや下の2つの星のうちの下が彗星です。木星の衛星も2個写っています。
 
いずれも撮影地:茨城県つくば市、撮影者:上原貞治


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