ASIAir Proの反射 望遠鏡への鏡筒交換

福井雅之

 

1.はじめに
タブレット用の天体観測アプリASIAir Proを使い始め て間もなく3年になります。これまで多くの星雲・星団・彗星を撮影し、その使 い勝手の良さには大変満足しています。今後も天体写真撮影のメイン機材として活躍してくれることと思います。
これまでASIAir Proと組み合わせる鏡筒は、口径5cm焦点距離250mmの中 国製REDCATもしくは口径6cm焦 点距離350mmBORG60EDいずれかの屈折望遠鏡でした。この程度の口径でも60秒程度の露出時間できれいな星雲の姿が写ってくれるのには感動です。カメラが高感 度になったおかげとつくづく感じています。
しかし、遠い銀河や球状星団、惑星状星雲など小さな天体ではどうしても拡大トリミングが必要となり、解像度や粒子ノイ ズの点で大口径鏡筒に軍配が上がるのは否めません。そこでASIAir Proと ニュートン式反射の組み合わせをやってみようというのが今回のテーマです。
カメラはZWOASI294MC、 赤道儀はCELESTRONAdvanced VXでこれまでと変わりません。

2.ASIAir Proとは
以前の「電視観望」紹介記事https://seiten.mond.jp/gt69/denshi_kanbo.htmで、ASIAir Proの紹介をさせていただきましたが、実際の動きや使った感想交えて 再度簡単にまとめてみます。前回記事と一部重複することご容赦ください。

2−1.極軸合わせ(PA
鏡筒を北極星に向けて、内蔵星図とカメラ撮影画像のずれを検知して水平・垂直方向の補正角度を割り出して修正方向と量 を表示してくれます。ドットをターゲットスコープ(十字+二重円)の中央に来るように追い込むことで正確な極軸合わせが可能です。た だ、極軸望遠鏡を使ったアナログ的な合わせ込みの方がやりやすいかもしれません。しかしながら現有の赤道儀には極軸望遠鏡を搭載して いないのでASIAir ProPA機 能に頼らざるを得ません。2秒程度かかる撮影時間ごとに補正計算するので調整 には5分程度かかるのが難点ではあります。



  
                  PAに成功すると花火が…

 

最近のバージョンアップで、北極星が見えない 空でも極軸合わせができる機能が搭載されま した。内蔵星図とカメラ撮影画像のずれを検知して水平・垂直方向に修正方向・量を割り出すのは北極星を使った場合と同じです。どうし ても北側が見えないようなベランダからの観測には重宝すると思います。

2−2.ピント合わせ(Focus
恒星像の拡がり具合を最小(点画像に近づける)にすることでピント合わせを行います。タブレット上の像の大きさ数値・ グラフを見ながら最小になるようにフォーカスノブで追い込みます。ただ実際は鏡筒にバーティノフマスクをかぶせて恒星中心から出る放 射状の線のバランスを取るアナログ的なやり方が合わせやすいので私はこの方法を使っています。

 




 

2−3.天体導入
前述「電視観望」の紹介記事でも書きました通り天体導入には3つの方法(@対象天体リストから選択 A星図(Sky Atlas)を見ながら中心位置を選択 B赤経・赤緯の数値入力があります。 @対象天体リストから選択が素早く指定できますが、彗星のように登録されていない天体の場合はB赤経・赤緯の数値入力を使います。A 星図(Sky Atlas)を見ながら中心位置を選択には次項プレートソルブ 補正量をキャンセルして導入精度を上げる機能が用意されていますが私は使ったことありません。





2−4.プレートソルブ
この機能がASIAir Proの真骨頂です。2−3.天体導 入の指定により赤経・赤緯の情報で対象天体に鏡筒を自動的に向けます。次に内蔵星図とカメラ撮影画像のずれを検知して補正量を割り 出し自動的に赤経・赤緯軸を補正分微回転させます。極軸が合っていれば1回のずれ補正だけで対象天体をドンピシャ中央にとらえること ができます。この機能はどんなに暗い天体でも30秒もあればピッタリ中央に合 わせてくれるので天体観測のハードルを大幅に下げてくれました。

2−5.画像合成・処理
観測しながらスタック処理で撮影画像を重ねてくれるLIVEモー ドを搭載しています。ダークやフラット補正もリアルタイムでやってくれます。この機能はでその場でスタックした精細な画像が見られる ので観望会で重宝します。ただスタックを重ねるので時間がかかるのが難点ではあります。

 




 

以上述べましたように、ASIAir Proは天体 観測を行うときの赤道儀・鏡筒・カメラの制御に加え、ガイド望遠鏡を使った追尾精度補正機能も搭載、さらに画像処理も一手に引き受け るセンターコンソールという位置づけになります。特にプレートソルブは秀逸で、どんな天体もど真ん中に入れてくれるので撮影まで の時 間短縮に大きく貢献します。

3.鏡筒交換
さて本題です(と言っておきながら本題の方が中身ないですが)。
今回ほとんど使う機会がなく物置に眠っていた安物のニュートン式反射望遠鏡(口径15cm焦点距離750mm球 面鏡 ミザールテック社製)を赤道儀に載せ、ASIAir Proが正常に動 作するかテストしてみましたところ、プレートソルブもちゃんと働き対象天体M51(りょ うけん座子持ち銀河)を画面中央にとらえることができました。
自宅前で撮影した画像をご覧ください。撮影日は満月が昇り始め、全天に薄雲がかかっている最悪のコンディションでし た。焦点距離設定を250mmから750mmに 変更、カメラの感度も最大の390から250に 落としました。120秒露出での撮影画像8枚、ダーク画像8枚をスタッ ク合成し、画像処理・トリミングを行いました。今までどうしても写らなかった腕の濃淡が少し見えてきたのはうれしい限りです。同じ日 に250mmで撮影したものを並べます。





 

悪条件下での撮影でゲインも露出時間もトリミン グ拡大率も異なるので単純比較はできません。ただ精細感は焦点距離が長い15cm反 射望遠鏡のほうが明らかによい印象です。廉価球面鏡ではありますが口径15cmら しいポテンシャルはあるように感じました。
15cm
鏡筒での撮影中ピントをずらした恒星像から明らかに光軸がずれているのがわかりました。納得いくまで光軸 調整しすっきり晴れた星空で銀河・球状星団・惑星状星雲などの小さな天体を撮影してみます。オルバース彗星、紫金山・アトラス彗星も 是非狙ってみたいです。この鏡筒で満足いく写真が撮れましたらまた銀河鉄道に投稿させていただきます。

 



 



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