5万年ぶりに回帰したZTF彗星
福井雅之
1. ZTF彗星とは
ZTF彗星(C/2022 E3)は5等台にまで明るくなり久々の肉眼彗星となりました。パロマー山天文台で行われているサーベイプロジェクトにより2022年3月に17等台で発見され、2023年1月13日に近日点を通過、2月2日に地球に最接近しました。
この彗星の軌道は放物線に近い楕円軌道を描いており、前回太陽に近づいたのは今から5万年ほど前だったということで久しぶりの回帰となります。
2.1月30日自宅で撮影
彗星が近日点通過後の1月30日、月が沈んだ夜中2時から自宅前で撮影準備を始めました。光度予想ではこの彗星の最大光度の5.2等です。この日の福知山の最低気温は-5.3℃、赤道儀コントローラが真っ白になる厳しい環境のなかでの撮影でした。望遠鏡をセット⇒レンズに霜よけヒーター取り付け⇒ピント・極軸合わせ⇒プレートソルブを使ったZTF彗星導入⇒ガイドスコープの調整。約30分の厳寒の屋外での作業はきつかったですが、これさえ終えればあとは勝手に撮影してくれるので私は暖かい屋内に避難する自宅ならではの撮影スタイルです。
地球に近づいている彗星撮影は移動量が大きくなるのでできるだけ短時間で切り上げます。カメラゲインを最大にして60秒露出で5枚撮影しZWO社製アプリASIStudioでスタック合成しました。
私がこの彗星を撮影したのはこの日限りです。舞鶴の小谷様は暗くなっていく姿を追い続けられ、3月20日10.0等の「さよならZTF彗星」として撮影されています。次にこの彗星が戻ってくるのは5万年後。そのときの地球はどうなっているのでしょうか?
−撮影データ−
撮影日 :2023年1月30日AM2:45
機材 :鏡筒 REDCAT口径5cm/焦点距離250mm
カメラ ZWO社ASI294MC
撮影・処理:60秒露出を5枚撮影しASIStudioでスタック処理 PhotoShop NIKCollectionで画像処理
次の写真は表紙写真をネガポジ反転したものです。