2001しし座流星群観望記
               福井 雅之 
             (静岡県田方郡函南町)
 
1.今年も「しし座流星群」大出現??
 中秋の名月を少しすぎた頃、小学校5年の長男が「月の方角と高度を1時間おきに観測する」という理科の宿題をもらってきました。折しも月は下弦の時期「子供たちは朝の3時頃に起きて本当に観測するのだろうか」といらぬ心配をしつつ、天体望遠鏡の赤道儀を方角・高度を測定できるよう経緯台に変更、ほとんどお父さんの宿題になってしまったという親バカぶりを発揮してしまいました。でも10年ぶりに望遠鏡で見た月と土星は久しぶりの感動でした。
 そんなある日、たまたま本屋さんで「しし座流星群」大出現の可能性(アッシャー博士の予測)の特集記事を発見しました。
 「あれ?しし座流星群って、ヨーロッパで大出現したピークから2年が経過しているのではなかった?何故今頃また騒がれているの?」
 「30年くらい前にもジャコビニ流星群の観測で友達4人と山に登って肩すかしを食らった経験からも流星の予測は当たらないしナァ〜」
 「でももし本当に大出現したのを見逃したら一生後悔するしナァ〜」
 いろいろな思いが交錯するなか、いつの間にか心の中は翌日会社は休みにし、観測に出かけることを決心していました。
 そして家に帰って早速インターネットで「しし座流星群」の情報を収集、さらに翌日には会社に有給休暇を申請し万全の体制を整えました。「せっかく遠出するのならできるだけ条件の良いところ」と考え、地図を見ながら候補地を次の2カ所に絞り込みどちらに行くかは当日の天気で決めることにしました。
   候補地1)南アルプス(以前観測に行って星空の暗さに感動したところ)
   候補地2)信州野辺山近辺(今回も大勢の観測隊が集結するとの情報が)
 
2.有給休暇がとれない!!
 ところが、11/19Xデーの2W前に総務課より突然のメール、「11月19日の9:30から環境ISOの内部監査ミーティングをやる。ついては主任監査員の福井さんには必ず参加してほしい」とのこと。
 「何でこんな日にやるんだ。俺は聞いてなかったぞ。日程をずらすことはできないのか。」とかなり抵抗はしたものの結局「すでに日程調整が済んでおり今から変えられない。何とか協力してほしい。」の一言で泣く泣く休暇を取り消すはめになってしまいました。
 「9:30のミーティングに間に合うよう会社に着くためには、少なくとも7:30には家を出なければならない(函南町から東京大崎まで片道約2時間の新幹線通勤なのです)。とすると南アルプスも野辺山も絶対無理ではないか。」と半ばあきらめムードになり一気に情熱が冷めてしまいました。
 
3.いざ、箱根へ!
 そうこうしているうちにXデー前日の11月18日、今回はあきらめて「家の外で見ればいいや」と考えていましたが、「もしかしたら一生に一度の大出現があるかも」と気を取り直し準備だけはしておくことにしました。
 押入れの奥から30年前のアサヒペンタックスSP2台を引っ張り出し、フィルムはFUJIの800を購入。あとは夜が来るのを待つことにしました。
 昼間の晴れ具合から天気は大丈夫だろうと安心していましたが、午後11:00に外に出てみたら全天曇に覆われて星一つ見えず愕然。今回はダメかとあきらめかけていたところ少し雲の切れ目を発見、「可能性があるのなら少しでも好条件で」といてもたってもいられなくなり、車で30分で登れる箱根に向かうことにしました。
 観測場所を探して箱根スカイラインを熱海峠から南下、しかしめぼしい観測地点である韮山峠や亀石峠などは既に車でいっぱいだったので再度車を北上、今は閉鎖されて進入禁止のロープが張られている玄岳パーキングエリアに観測地を決定しました。この玄岳パーキングエリアは観測場所としては結構穴場で、後楽園球場くらいの広大な草地で障害物も少なくほぼ360°見渡すことができます。唯一の欠点はは東方向がちょうど熱海の市街地の明るさにじゃまされることですが今回は我慢することにしました。
 道ばたに車を止め、カメラなど機材を搬入・観測態勢を整え終えたときはすでに1:00を回っていました。
 
4.初めて見る流星シャワーに感動!!
 午前1:30には一面にかかっていた雲がすっかり晴れ上がり満天の星空となりました。この時点で、大きな流星が15秒に1個くらいの割合で観測。「これはすごいことになる」という予感が現実となりあの2時〜4時の大出現を迎えました。
 あとは時間のたつのも忘れ、夜空を見上げつつ夢中で2台のカメラのシャッターを切り続けました。空を見上げれば常にどこかで流星が流れている素晴らしい天体ショーでした。
 4時を回ったところでフィルムもなくなったので撤収を決心。まだまだ活発に飛んでいる流星に名残惜しさを感じつつも仕事のことも考え家路に着きました。



フィルム:FUJI SUPERIA ズームマスター800
プリント。撮影・スキャン:福井 雅之
輻射点付近です。4個写っています。
 

 家に着いてからパソコンを立ち上げ、早速しし座流星群HP覗いてみると掲示板にはひっきりなしに「感動!」「すごかった!」の文字が。多くの人が場所こそ違っていても同じ体験ができた喜びを語っていたことにさらに感動しました。
 “不景気”“殺人”“テロ”“戦争”などイヤなニュースばかりの昨今にあって、久々のほのぼのとした話題を提供してくれたしし座流星群。願い事を3回唱えるには速い流星が多かったのですが、こんなささいなことをきっかけに、すこしでも世の中が明るくなってくれるのを願うのは私だけでしょうか。
  今回の大出現を分単位近くまで正確に予想されたアッシャー博士には本当に感謝します。博士によれば、来年はヨーロッパで再度大出現の予想がされていますが、今度は少し外れて日本でもう一度同じ体験ができることを是非期待したいものです。