プラネタリウム基礎知識

福井雅之

 

1.はじめに
福知山に戻ってちょうど1年が経過しました。舞鶴天文同会会長の小谷先生と知り合いになったのをきっかけに福知山市自然科学協力員会に入会、その事務局である福知山児童科学館に出入りするようになったことから館内のプラネタリウムに触れることができるようになりました。今回はこのプラネタリウム(五藤光学製GX-AT)の取扱説明書やその他資料からプラネタリウムの基本構造についてご紹介します。

2.プラネタリウムの歴史
プラネタリウムはその名前のとおり惑星の動きを表現できるものの呼称です。日本製プラネタリウムの第一号は五藤光学研究所が1929年に製作した“精密太陽系運動儀”であると言われていますが、これは星を投映する装置ではなく惑星の動きを表現する模型であり一般的なプラネタリウムのイメージとは異なります。ドーム投映型のプラネタリウムは1923年ドイツのカールツァイス社が製作したものが最初で、第二次世界大戦後は日本でも様々なメーカや個人研究家が製作するようになりました。このなかで基本機能を備え現在も量産を続けているのが五藤光学とコニカミノルタのプラネタリウムです。両社は、1959年から現在に至るまで大小様々なタイプを発売し現在も多くの施設や学校で活躍しています。後発の100万個の星の投映で有名なメガスターの大平技研とあわせて現在日本のプラネタリウムメーカは3社に絞られます。
福知山市児童科学館に設置されているプラネタリウムは1980年に発売開始された五藤光学製のGX-ATというタイプです。ドーム直径10mクラスの小型タイプではありますがプラネタリウムの基本機能を全て備えた光学式プラネタリウムの成熟モデルです。

3.プラネタリウムの基本構造
プラネタリウムの投映方式は点光源から孔を通してドームに投映するピンホール式、恒星原版を内蔵した投映機を多数使った光学式、それとプロジェクターを複数使って投映するデジタル式の3タイプに分けられます。
     
美しい星空を再現できるのは光学式ですが、昨今では光学式とデジタル式の長所をバランスさせたハイブリッド式が主流になってきています。福知山市児童科学館のプラネタリウムは光学式で、放映プログラムの解説画面を映し出せるPCプロジェクターを別に備えています。
また、光学式プラネタリウムの構造的な分類としては恒星球と惑星棚の位置関係違いによる分類があります。これは惑星投映機を恒星球のどの位置に配置するかの違いです。五藤光学では当初ツアイス型で検討されたようですが、恒星球の重みによるたわみで発生する投映像ずれを回避するためモリソン型に方針変更しています。福知山市児童科学館のプラネタリウムもモリソン型です。一方、コニカミノルタはツァイス型を中心に発売してきました。
現在は両社とも構造が簡単な一球型が中心になっており、惑星投映機が恒星球と一体になっているタイプと別ユニットに分かれているタイプの2通りの製品が存在します。いずれにしても恒星の動きに惑星投映機が同期するように設計されています。後発の大平技研メガスターのカタログを見ていただくと一球型の洗練されたデザイン・構造がよくわかると思います
[外部リンク *1)]


     ダイアグラム

自動的に生成された説明
外部リンク *1) Jpn_h1-h4_表紙_cc2014のコピー (megastar.jp):

 https://www.megastar.jp/wp-content/uploads/2020/01/MEGASTAR_brochure_2018_japanese.pdf

 

4.プラネタリウムの基本動作
プラネタリウムには、日周軸・歳差軸・緯度軸の3つの回転軸があり、地球上どの場所のいつの星空であってもこの3軸で制御し投映できます。
@日周軸
機械の中心を通り底面に垂直に立てた軸で、この軸の延長が天の北極・天の南極になります。星空を時間で移動させる場合はこの日周軸で回転させます。
A歳差軸
惑星棚⇒恒星球⇒惑星棚の中心線が歳差軸です。黄道面に垂直に立てた軸でこれを延長した点が黄極点になります。この軸は天の北極の移動に対応するもので、25,800年で一回転します(現在の北極星はこぐま座α星ですが12,000年後にはこと座のベガがその役割を担います)。またこの軸に垂直な黄道面には惑星棚を設けます。惑星ごとの軌道にあわせて投映機を駆動させ天球を移動する太陽・月・惑星の動きを実際の星空と合わせます。
B緯度軸
三軸中心を通り東西に延びた軸が緯度軸で、この回転により地球上のすべての場所の星空を映し出すことができます。
      
ダイアグラム, 設計図

自動的に生成された説明

5.福知山市児童科学館のプラネタリウム仕様と構造
福知山市児童科学館に設置されているプラネタリウムは、前述のとおり五藤光学製のGX-ATで、仕様(機能・性能)と構造は次のとおりです。
GX-AT の機能と性能>
・ドーム直径:913m、水平。
・恒   星: 自社製ヘキサー75mm/F3.5 投映レンズ、
       恒星数6.25 等星まで約6,500 個、
       ブライトスター17 本、星雲星団8 本。
・惑   星:月以外は2 本投映。
・座 標 系: 赤道、黄道、子午線、歳差円、方位角、地平高度、赤緯目盛(OP)、極点、方位、中間方位(OP)、天頂点、緯度指示(OP)。
・照 明 系:昼光、青光、朝焼・夕焼、薄明・薄暮。
・運 動 系:日周運動 220 分/日。
       年周運動 220 分/年。
       緯度運動 220 分/周。
       歳差運動 220 分/周。
       架台回転 110 分/周。
・自動演出装置:プログラムの入出力にPC98 採用。

GX-AT の構造>
   ダイアグラム, 設計図

自動的に生成された説明


6.おわりに
今回は「プラネタリウムとは…」の基礎編として紹介しました。プラネタリウムに出かけられたら開演前の明るい時に装置をご覧になって、どのように動くのか思いを巡らせてみてください。
まだまだ私自身の知識が足りず、惑星投影機の駆動技術やプラネタリウムの初期設定・実操作など書き足りない部分が多々あります。理解が深まりましたら改めて紹介したいと思います。

 

参考文献:五藤光学GX-AT取扱説明書

                                          プラネタリウム技術の系統化調査 児玉光義著

                                          特別展プラネタリウムのしくみ 和歌山市立こども科学館HP



今号表紙に戻る