レナード彗星ドタバタ撮影記
福井 雅之
昨年のネオワイズ彗星に続き、アマチュアでも撮影できそうなレナード彗星(C/2021 A1)が12月12日地球に最接近しました。12月15日にバーストして3等台まで明るくなったとの情報もありますが現在は高度が低く厳しいです。月明かりのない環境で、ある程度高度が確保でき、他の天体と一緒の撮影を考えると、12月3日のりょうけん座の球状星団M3との接近がベストと考え、ここに照準を合わせて準備にとりかかることにしました。
今回は、M3と一緒の写野にしたいので口径5cm焦点距離250mmの電視観望機材で狙ってみることにします。ステラナビゲータで調べると、高度が上がって来る明け方5時頃から薄明手前までがベストなタイミングで、この日の等級は6.1等、尾はM3と逆方向になります。撮影にあたって最大の敵は雲と霧。いつも観測地決定のよりどころにする雲予報アプリSCWによると福知山から兵庫県中北部にかけては雲がなさそう。西方向で空が暗く霧のなさそうなところを私なりに考え“夜久野高原”を候補地として移動撮影を計画しました。
以下当日の観測記録です。予定通りにはいかずドタバタの撮影になりましたが何とか彗星の姿を写真に納めることができホッとしています。
<2021年12月3日>
2:00 :スマホの目覚ましで起床。着替えをすませて2:20猪崎自宅を出発。
⇒予想通り福知山名物“霧”の中を“夜久野高原”を目指して移動。国道9号を西に進むも霧はまったく晴れず不安がよぎります。
3:00 :夜久野高原到着
⇒福知山を出たときよりもさらに霧が深く星どころか全面何も見えません。5:00に霧が晴れるとは考えられないことから観測地
変更を決断。さらに車を西に走らせて和田山方面に向かうことも考えましたが最適な観測地が見つかる保証がないことから
福知山方向に戻ることを選択。霧がなく東方面に開いている場所で思いついたのが西中筋天文同好会の定番観測地である
“三岳山中腹”です。ここなら北極星さえ見えれば東方向はOKの筈です。
3:10 :三岳山に向け出発
⇒再度移動を開始した途端、ガソリンがほとんどないことに気づきました。準備不足を後悔しましたが何とかするしかありません。
「三岳山に登って観測してから福知山市内までギリギリ足りるのでは?しかし万一ガス欠になったら…」など考えながら車を走ら
せ、結局一度給油のため市内のガソリンスタンドに戻ることにしました。給油を終え再び三岳山方面に移動。このドタバタで40分
以上の時間ロスが発生したのは痛かったです。
4:10 :三岳山の“旧青少年山の家”から少し下がったいつもの観測場所に到着
⇒薄明までが勝負ですので時間がありません。北極星が木々の間から見えたのは幸運でした。機材の組立・水平出し、タブレットと
のWi-Fi接続、北極星での極軸合わせ、パーティノフマスクでピント合わせを済ませて撮影できる環境が整ったのは5:00前でした。
4:50 :ようやく撮影開始
⇒ステラナビゲータであらかじめ調べておいたレナード彗星の赤経・赤緯をタブレット上の電視観望アプリASiairに数値入力します。
内蔵星図と実際の撮影画像を照合させながら自動調整するプレートソルブ機能はさすがによくできておりドンピシャで画面中央に
彗星が映し出されました。ファインダーを覗きながら目標天体を探した時代から大きな進歩です。M3と尾の方向を考慮してカメラ
を回転させてようやく撮影開始です。時間との勝負もありカメラのゲインを最大にすることで露出時間を短縮、60秒と120秒の露出
時間で5枚ずつの撮影を繰り返しました。薄明になりかけた頃、レンズキャップをかぶせカメラノイズ除去用のダーク画像を取得
して撮影終了。画像のスタック処理は自宅に戻ってからのお楽しみです。
6:00 :終了・撤収
⇒夜明け前の朝焼けをスマホに納め帰途につきました。
撮影地からのレナード彗星の位置(12月3日5:00)
<撮影データ>
撮影日:2021年12月3日(金) 撮影場所:福知山市三岳山中腹
撮影機材:鏡筒 REDCAT51(口径5cm f=250mm) カメラ ZWO ASI294MC
電視観望装置&アプリASIAIR-PRO にて120秒露出を10枚スタック
トリミング/コントラスト/色補正:ASI STUDIO + Adobe Photoshop + NIKCollection
レナード彗星と球状星団M3
三岳山からの夜明け前東空(スマホで撮影)