2021年1〜8月の天文現象の報告
 
                           上原 貞治
 
以下で、"◎>"は、2021年年頭に西中筋天文同好会のウェブページに出した「私が選んだ2021年の天文現象」からの引用です。●は私による観測報告です。
 
●3月に小惑星ベスタが衝になり、6等まで明るくなりました。3月中には撮影することが出来ませんでしたが、4月2日に7等級になったこの小惑星の撮影をしました。(下の写真1)
 
◎>5月26日の皆既月食は、夕方、月が昇ってくる頃に始まります。ギリギリ浅い皆既月食で、西日本では、まだ空がうす明るいうちに皆既食になってしまいます。
●残念ながら薄曇りで皆既月食の頃は時々薄雲を通して望遠レンズで何とか見られる(肉眼では探すのさえ苦労する)という状況でしたが、皆既月食が終わった直後に、それなりの明るい写真を撮ることができました。(下の写真2)
 
●7月の明け方に秋の星座を観察したところ、ミラが4等台から2等台に増光する様子を捕らえることができました。 また、シーズン始めに明け方の低空に現れたベテルギウスの光度を観察しましたが、0等台後半の通常の明るさでした。
 
◎>8月9日の3O2Tは、大きいほうのガニメデがエウロパを隠します。高倍率で重なっているかたちが見えるでしょうか。
●木星の衛星同士の掩蔽の写真撮影を試みました(下の写真3)。写真は、上が南で、左が西。衛星は、木星本体の左に2個。明るいほうがガニメデ、暗いほうがエウロパ。右の1個はイオです。
 木星の衛星同士の掩蔽で、衛星が部分的に重なって雪だるまみたいになっているのが撮りたかったのですが、上から3枚目の接触した時刻には1個にしか写りませんでした。衛星ガニメデの直径は本体の直径の1/30ほどですが、ピントといい、シンチレーションの状況といい、木星本体の数本の縞模様を撮るよりはるかに難しいようです。
 
◎>8月13日の早朝に極大を迎えるペルセウス座流星群は、深夜に月もなく、一晩中活発な活動がみられるものと期待できます。
●8月11日の夕方以降、つくば市では、連日の曇りか雨でぜんぜん星は見られていません。ここまでにしたいと思います。 
 
 夏の名残に、写真4に、さそり座の散開星団、M6とM7の写真を掲げます。
 
 


写真1: 小惑星ベスタ
2021年4月2日19時20分 露出時間8秒。 ズームレンズ、f=55mm、F6.3。
ニコンD5300、固定撮影。トリミング、明るさとコントラストの補正。
黄色のマークが示すのがベスタ。左下の明るい恒星は、しし座δ星。
 


写真2: 皆既月食
2021年5月26日20時15分(左・皆既中)、20時29分(右・皆既の終わりの直後)  露出時間2秒、F5.6(共通)。 望遠ズーム(f=300mm)、ニコンD5300、固定撮影、トリミング。2枚とも薄雲を通しているが、左の写真は、かなり厚めの薄雲。
 


写真3: 木星の衛星同士の食
2021年8月9日2時30分、43分、3時6分、2時36分(上から下に順に)。
露出時間 1/60秒、1/15秒、1/60秒、1/80秒(上から下に順に)。
20cm反射(f=800mm)、アイピース6mmにて拡大。合成f約15000mm、ニコンD5300、自動追尾。
トリミング。ガンマ補正。薄雲あり。アダプターが途中で緩んだため、拡大率は揃っていない。
 
衛星は、木星本体の左に2個。明るいほうがガニメデ、暗いほうがエウロパ。右の1個がイオ。上から3枚目は、ガニメデがエウロパの一部を覆い隠している状態。いちばん下は、木星本体の縞模様を強調するために、露出を短くして、逆向きのガンマ補正を加えたものです。
 


写真4: 散開星団M6とM7
2021年8月3日20時02分 露出時間8秒。 ズームレンズ、f=145mm、F5.6。
ニコンD5300、自動追尾。トリミング、明るさとコントラストの補正。
右下の黒線は電線。
 
(写真1〜4すべて)撮影者:上原 貞治、撮影地:茨城県つくば市



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