よく出来た星座(夏・秋編)
上原 貞治
 
   全天には88の星座があります。うち、日本本土からは、70くらいの星座が見られます。ここでは、それらの中から筆者が「よく出来た星座」だと思うものを6つ取り上げました。 ここでいう、「よく出来た」というのは、立派だ、美しい、というのとは違って、自然の意匠としてよく出来ていてとても偶然とは思えない、職人技のようだ!という意味なのですが、前置きをするより、すぐに本題に入るほうが話が早いと思います。
 星図はステラナビゲータ9によるものですが、太いのと細いのとの星座線は筆者によるものです。
 
 夏・秋編(今回)と冬・春編(次回)に分けます。
 
1.かんむり座 (Corona Borealis)
 かんむり座は、よく出来た星座です。星の並びがきれいな半円形になっていて、しかも、両端がちょっと直線的に伸びていて、円形の王冠というよりは、ティアラのような上品さと落ち着きがあります。これが歪んだ閉曲線だったら、これだけの気品は出ないでしょう。
 特によいのは、唯一の2等星アルファ星(ゲンマ、またはアルフェッカ)が中央ではなく、向かって右に1つずれてついていることです。あたかも王冠にはめ込まれた宝石のようですが、真っ正面ではないところが威張っていなくて奥ゆかしくてよろしいです。他の星は、おおむね粒がそろっていますが、アルファ星を含め右寄りの星々が明るめになっていて、安定した雰囲気をかもしだしています。



 
2.はくちょう座 (Cygnus)
 はくちょう座もまた、よく出来た星座です。北十字星と呼ばれていて十字架として整った形をしていますが、それだけではありません。首がめいっぱい長い白鳥のかたちとしてすばらしいプロポーションです。最もすばらしいところは、翼にボリュームがあることです。ちゃんと前後に平行した幅のある翼です。しかも、両端が本物の白鳥の翼同様後ろに向いて折れています。見事としかいいようがありません。それから、不完全ながら、短い三角形の尾羽の部分もついています。これが天の川を背景に飛んでいるのですから、意匠と芸術的価値と雄大さを兼ね備えて、はっきり言って出来すぎです。オリオン座、さそり座は、超豪華な製品と言えますが、はくちょう座は細かいところまで気が配られた職人渾身の作と言えそうです。



 
3.とかげ座 (Lacerta)
  とかげ座は一般にはほとんど知られていない星座で、私も数えるくらいほどしか見たことがありませんが、隠れたよく出来た星座だと思います。小物アクセサリーとしての髪飾りや根付けのような感があります。とかげ座は小さい星座で、かたちも単純です。カシオペヤ座のミニチュアのようなW型を先頭に8星がジグザグに並びます。漫画に出てくる南洋産のトカゲで、背中にギザギザの背びれのようなのがついている愛嬌のある印象です。英語のリザードに対応するものと思います。頭部に1星が余分にあって、長めの三角形の顔を作っています。参照の星図では足もつけてみました。場所は、はくちょう座、ペガスス座、カシオペヤ座に囲まれた一等地にありますが、あまり目立たない星座なので見つけにくいです。しかし、いったん見つけてしまうととても特徴のあるかたちで、目立たないけど目を惹かれるという不思議な星座です。星の明るさはおおむね4〜5等星で、そろってはいますが肉眼で見るには暗いので双眼鏡で鑑賞して下さい。



 
                       (つづく)


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