反射・屈折望遠鏡比較

福井雅之

 

1.はじめに
最近、知り合いの方から古いビクセンの8cm屈折望遠鏡(+2軸モータドライブ付き赤道儀)と現在も発売されているミザールの15cm反射望遠鏡(+ビクセン手動ハンドル赤道儀)を譲り受けました。

そこで私の天体写真のほとんどで使用しているミザール12cm反射との見え方比較をしてみることにしました。このミザール12cm反射は今となっては貧弱なスペックですが、車で簡単に移動撮影できることから結構重宝しています。

 本来なら惑星など何らかの天体を対象に比較記事を書くつもりでしたが、例によって締め切り間際で慌てて書き始めたことと最近の天候不順で星空が見えなかったため天体を使った比較ができていません。このため今回は地上遠景での眼視/写真比較となってしまいましたことご容赦ください。実際の天体での比較は次回銀河鉄道に寄稿させていただきます。

譲り受けた8cm屈折は価格的にも性能的にも私の12cm反射と同等クラスでしょうか。反射/屈折の見え方の違いがわかればそれぞれ使い分けできることから是非やってみたいと思っていました。しかしながら今回の地上の遠景テストだけでは3つの望遠鏡のはっきりした違いはわかりませんでした。ということで今回はこんなテストをしてみたという報告に留めさせていただき、正確な比較結果は実際の天体を使った眼視&写真観測に持ち越しとさせていただきます。

そうは言っても何らかの見解がないと記事にならないので地上遠景テストでの私の私見を以下述べさせていただきます。

2.機種別スペック



  

@  ミザール12cm反射(現有機)       A ビクセン8cm屈折          B ミザール15cm反射(中国製)

 

3.眼視での見え方

2km先の高圧線鉄塔先端部の像を眼視で比較しました。アイピースは@AビクセンOr6mm BPL6.5mm(中国製?)です。

結果今回の3機種ではそれほど明確な違いはありませんでした。しいて言えば、Aビクセン8cm屈折は色収差が若干感じられる Bミザール15cm反射は明るいが若干コントラストが低い と感じられたので最も安定して見えたのは@ミザール12cm反射かな?という程度です。

 

4.写真での見え方

 EOSkissX4による直焦点と拡大法で撮影し比較を行いました。対象は眼視と同じ約2km先の高圧線鉄塔です。

Bミザール15cm反射に付属していた31.7mm径アメリカンサイズのアイピースに合うカメラアダプタを持ち合わせていないことから、今回は@ミザール12cm反射とAビクセン8cm屈折2つの比較となります。写真よりも眼視のほうがくっきり見えるのは人間の眼のピントおよび露出調整が自動で働くからでしょうか?写真の場合、ピントの追い込みや露出時間調整で随分出来栄えに差が出ます。(難しいけどウデの見せ所?)

 

<直焦点撮影>
結果@Aの差はほとんど感じられませんでした。直焦点撮影は反射/屈折ともカメラの高倍率望遠レンズの代替として使っても遜色ないレベルと思います。直焦点は星雲や彗星など比較的大きく淡い天体の撮影に適しています。最近のカメラは高感度になってきているので、ある程度の口径があれば十分楽しめるのではないでしょうか。

 

ミザール12cm反射(直焦点)   ビクセン8cm屈折(直焦点)

 [拡大画像]            [拡大画像]

 

<拡大法>

性能差が出るのは惑星など小さな天体を撮影する拡大法です。今回使用したアイピースは@Aとも同じビクセンOr6mmです。

 鉄塔に書かれていた“59”の文字を見るとAビクセン8cm屈折のほうがくっきり見えピントが合っているように見えますが、ここまで拡大撮影するとピントの追い込みがかなりシビアであり、この写真だけでこれが言い切れるかは微妙なところです。
 ただAビクセン8cm屈折は、屈折の弱点である色収差が認められるのは事実であり、総合的には五分五分の引き分けといったところでしょうか。

 

ミザール12cm反射(拡大法)            ビクセン8cm屈折(拡大法)

 [拡大画像]                     [拡大画像]

 

<まとめ>
冒頭申し上げましたとおり、実際の天体での比較ができていないので最終結論は次回持越しとさせていただきます。夜の天体観測が昼の地上遠景と大きく違うのは @はるかに暗い被写体光量 A背景の宇宙空間と対象天体のコントラスト差 B大気によるゆらぎの3つと思います。いかに暗い天体を鮮明な像にできるかはやはり“口径”と“レンズや鏡面の精度”“光軸精度”につきると思います。次回テストでは惑星・星雲の眼視観測および写真撮影で天体望遠鏡としての性能比較をしたいと思っています。
 最後に今回譲っていただいた2つの望遠鏡についての感想で締めくくらせていただきます。

ビクセン8cm屈折を初めて使ってまず感じたのはその軽さ・扱いやすさです。これは車での移動撮影が多い私の観測スタイルに大変適していますので、今後活躍する機会が多くなりそうです。
 今回テストではあまり触れていませんが、もう一つの中国製ミザール15cm反射は赤道儀込みで実売4万円という価格を考えると期待以上の性能でした。またこの望遠鏡は現有のミザール12cm反射よりかなり軽いのもメリットです。“光軸合わせ”をきっちり行いアメリカンサイズのカメラアダプタを入手できたら次回テストの写真撮影比較にも加えたいと思っています。



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