私の天文グッズコレクション(第12回 光学小物編)
 
上原 貞治
 
 
 今回は、天文グッズの本分に戻りまして、「光学小物」として、天体望遠鏡の付属品と双眼鏡を中心に、それを使って天体観測が出来るような物をご紹介します。これまで、こういう正統のグッズを紹介していなかったのは不真面目というかなんというか・・・。天体望遠鏡の本体である鏡筒や、望遠鏡を買ったら常番で付いてくるような付属品は、「グッズ」っぽくはないので除外しました。
 
1.ユニトロン広視界アイピース・ワイドスキャン10mm
 一時、広視界アイピースというのが流行りまして、これで月面を見るとまるで月を周回しているような迫力があると聞き、これを買ってしまいました。本当は、テレビュー社のナグラーというのがよいとされていたのですが、それはお値段が半端ないので、通常のアイピース価格の範囲内であるこちらにしました。
 このアイピースは焦点の位置が普通のアイピースとかなり違っていて、合焦機構(たとえばドローチューブ)をかなり縮める必要があり、望遠鏡によっては使えません。私のビクセンのR200SSでも鏡筒単体ではピントが合わず、エクステンダを使ってやる必要があります。でも、これだと150倍で月が全部見え、大迫力です。


2.ルミコンフィルター、光害除去フィルター
 これも一時ブームになり、25.4径のものと 31.7径のものの2つを買いました。大きい方がルミコン社のもので、もう一方は国際光機だったかのオリジナル商品の光害除去用だったと思うのですが、いずれにしても、干渉フィルターで街灯の光が空に反映している波長部分をカットするものです。詳細の光学性能はわからないので、このたび、太陽スペクトルをカットしてみました。どちらも似たようなもので赤と青の比較的狭い部分が残るようです。
 これを使って写真を撮ったことはありませんが、銀河や彗星を観望したことはあります。この特性では、黄色や緑付近の中波長の明るい銀河や彗星向きでないことがわかります。最近はあまり使っていません。
 


  

3.ムーングラスとサングラス
 懐かしいでしょう。この緑色のムーングラス。こんなの誰が使うのか・・・ 子どもの玩具・・・ 私も長年バカにしていました。でも、20cm反射で満月に近い月を人に見せるときはあった方が安全だろうと買いました。広視界アイピースでなくても、月面観察はけっこうまぶしいのですよね。人に見せてまぶしいとか目がつぶれそうとか言われても困るし、かといって主鏡を絞っては20cmを運び出した意味ないですので、必要なこともあると思います。いっぽうのサングラスは骨董品です。いつ買ったものか望遠鏡に付いてきた物か忘れたくらいです。とにかく、現在はサングラスは望遠鏡に付属していませんよね。流通禁止品かもしれません。これで20cmで太陽を見るとおそらく簡単に割れるでしょう。8cmの直接焦点でサングラスを割ったことがあります。直角の角から光を逃がす「サンダイアゴナルプリズム」と併用すれば安全に使用できると思います。
 


4.サンダイアゴナルプリズム
 そして、これがそのサンダイアゴナルプリズムです。太陽を観測する際に、太陽からの光の90%以上がこの穴から外に逃げ、ごく一部だけが反射して視野に届きます。もちろん、これは眼視用のもので、サングラスと併用します。こんなものを投影法で使用すると2箇所から光が出てかえって危険です。昨今は、サングラスは売られていないので、サンダイアゴナルプリズムも相当のレア品と思います。この品は、40年以上前、ミザールの望遠鏡に標準付属していたのでした。
 


5.ワイドビノ
 これは双眼鏡です。これも一時期、人目を驚かせて流行りましたが、今でも売っているようです。私は流行りだした早期に買いました。ロシア製です。倍率が低く、視野も結構広いので、星座を見るのに役に立ちます。望遠鏡のファインダーを肉眼で見えない星に向けるのの補助にも使えます。ただし、光が屈曲して入ってきたりして光学的に完璧ではありません。ガリレオ式に近いようですが、広視界にするために通常の光学設計ではないのでやむをえないでしょう。お薦め品です。期待してはいけませんが、買って損はないと思います。ロシアのキリル文字で書かれている ZOMZが会社名で、BGsh というのが機種のブランド名です。
 

  

6.ダハ型双眼鏡
 コンパクトなダハ双眼鏡が欲しくなってこれを買いました。通常のプリズムがはいっていることが外からわかるポロ双眼鏡と違って鏡筒はまっすぐです。でも、正立像を得るためのプリズムが入っています。ところが、これはけっこう覗きにくく、天体観察用にはほとんど使っていません。どちらかというと、劇場やスポーツ観察に持っていくべきものです。ビクセン社の一般向け品です。
 


7.新星アダプター
 これは骨董品です。買ったのは、1971年頃。買ったときはもちろん新品でした。25.4径のアイピースを入れて拡大撮影する用途に今も持っていますが、最近は31.7径のしか使わないので別のアダプターを買いましたので、これはほぼ不要になりました。でも、40年にわたって使いましたから、もう宝物です。アイピースの位置を外からの操作で移動させて倍率(合成焦点距離)を変えることが出来ます。カメラが接眼部から抜け落ちるとえらいことですから、穴にネジを引っかけるようになっています。初めのころ、使いにくかったので、近所の鉄工所にたのんで穴を1つ余分にあけてもらいました。
 


8.コマコレクター
 ニュートン反射望遠鏡ビクセンR200SS専用のコマコレクターです。コマというのはコマ収差のことで、視野周辺の星が光の尻尾を引いたように見える収差のことを指します。いわば焦点の不良ですが、単純に放物面鏡を使うニュートン式では避けようがありません。といっても、天体観測の際には、目的の天体を視野中央(光軸付近)に持ってくれば済むので別に支障のない収差ですが、直焦点で広視界の星野写真を撮るときにだけ問題になります。そういうこともあろうかと、この補正レンズ(コマコレクター)をオプション品として購入しました。接眼筒の根元にねじ込んで付けます。眼視ではやや星像が甘くなるような気がするので使いませんが(そもそも使う必要はない)、写真用には満足できる効果があるようです。
 


9.プリズム
 ついでに、2.のテストで使ったこのプリズムも紹介させていただきます。太陽スペルトルを見ましたので、天体写真に使えないこともないでしょう。今年、ネットで買った物で、実用観測品なのか教材なのかアクセサリーグッズなのかわかりません。正三角形のプリズムは子どもの時からの憧れでしたが、やっと自分のを買うことが出来ました。本当は足が付いていると便利なのですが、それでは仕舞うときに邪魔になるので、これでよしとします。
 


 だいたいネタが尽きてきましたので、次回から補遺編を少しやってこの連載は終わりにします。


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