私の天文グッズコレクション(第7回 切手・エフェメラ類編)
                        上原 貞治
 
前回、前々回と2回連載でヘビーな「星図編」を掲載しましたので、今回は肩の凝らないライト感覚で行きたいと思います。なお、エフェメラというのは、箸袋とか煙草のパッケージのような使い捨てのものを指すそうです。(「日々の」という意味のギリシア語に由来していて、単数形 はephemeron。ephemeris (天体暦)と同語源でしょう)。今回は、何十年も使用した星図とは対照的に、一度使ってしまうとその本質的価値が失われてしまう、あるいは手元から去っていってしまう儚いものばかりです。これこそ、邪念のないコレクション固有の価値があるものでしょう。でも、私はこういう物のコレクターではないので、たまたまこんな物が手に入りましたよという程度のお話です。

1.天文記念切手−−国際宇宙年 と 日本天文学会創立100周年−−
 1992年は国際宇宙年ということで、地球周辺の宇宙環境などの観測が国際的に広く行われました。コロンブスの米大陸到達の500周年という意味合いもあったそうです。図柄は人工衛星になっています。解説によると、地球観測衛星「アディオス」と放送衛星BS-3でいずれも日本の衛星です。
 2008年は、日本天文学会の創立100周年で、1枚物の切手シートが発行されました。切手になっているのは、天体や人工衛星で切手になっていない図柄も描かれています。
 
  
 
2.天文切手ではない記念切手−−国際児童年−−
 これは1979年の国際児童年を記念して発行された切手で、天文切手ではありませんが、子どもが宇宙遊泳をしていて人工衛星だか星座だか流星だかわけのわからない昆虫を追いかけているというトボケたかわいさがあります。「隠れ宇宙切手」の名品とでも言えるのではないでしょうか。男の子と女の子の2種類があって、1枚ずつセットになっている小型シートと単一種類をあつめた大型シートの2種(縁に余白の有り無しで区別可能)が発行されました。
 
 
3.旧ドイツマルク紙幣
 これは、かつてドイツで使われていた10マルク紙幣です。肖像は、ドイツの数学者、物理学者ガウスです。ガウスは、1801年に発見された小惑星第1番ケレスの軌道を追跡計算して、天体力学の進歩に貢献しました。この紙幣には、彼の名を冠したガウス分布(正規分布)のグラフと関数式が印刷されています。この関数式こそ現在にいたるまで観測誤差理論の基礎となるもので、ガウスは観測データ処理に最小二乗法を導入し、その正当性をガウス関数を使って証明したのでした。私の持っているこの紙幣は、ベルリンの壁が崩される直前1989年に西ドイツ政府によって発行されたものですが、ドイツ統一後もユーロ導入まで同種の紙幣が印刷され通用しました。ドイツマルクは概ね60円くらいで、ユーロ導入の頃は1ユーロ=ほぼ2マルクということで物価の見当がつけられたといいます。
 
 
4.アンティーク天文器具テーブルナプキン
 これは、食卓のテーブルに敷く一人用のテーブルナプキンです。ポーランドに出張したときにお土産に買いましたが、実はイタリア製でStamperiaという会社が出している物です。いろいろな種類の天体観測や天文計算のための円盤や天球儀が貼り絵的にデザインされています。詳細は私には不明ですが、16世紀頃に使われた器具ではないかと思います。
 
 
5.切り絵絵はがき(明石市立天文科学館)
 これは、切り絵作家・小栗順子さんの作品の明石市立天文科学館の子午線の塔の絵はがきです。色、形とも相当デフォルメされていますが、独特の雰囲気が出ています。小栗さんは天文台の広報に協力されているようで、この絵はがきは国立天文台のW先生にいただきました。他にも天文台の機械などの一連の作品があるようです。
 
 
6.星座パック消しゴム
 形も色もかわいい黄道12星座のデザイン消しゴムです。てんびん座が大きかったりいて座が小さかったり変なバランスだなぁと思うでしょう。実は、ジグソーパズルになっていて組み立てると星形になります。日本のSEEDという消しゴム専門の会社が作った「Zodiac星座パック消しゴム」というものです。他に、海の生き物、日本列島などのジグソーパズルも出ているようです。でも、消しゴムとして使うと減るので、ジグソーパズルとしては使えなくなってしまいます。
 
 
7.彗星ワインのコルク栓
 彗星の絵をデザインしたワインのコルク栓です。2015年のフランスワインの新酒(銘柄は忘れたがボージョレではなかった)に使われていました。Mytik とあるのはコルクのメーカーとして名の売れたところのようです。古くよりヨーロッパでは、彗星が出る年はワインが美味しくなるという言い伝えがあって、大彗星が出た年は彗星の図柄を描いたワインが発売されました。このコルク栓はワインに触れる部分に彗星が描かれていて、絵の彗星によってワインが美味しくなることを祈ったものと思います。ビンの外からは見えず抜いてから気がつく趣向です。2015年のラブジョイ彗星とカタリナ彗星のおかげで美味しくいただきました。
 
 
8.サッポロビール新潟限定ビイル(アルビレックス新潟缶)
 これは、2016年に新潟限定で発売された缶ビールです。いずれも星☆をデザインしたマーク(エンブレム)を掲げるサッポロビールとアルビレックス新潟(プロサッカーチーム)のコラボになっています。サッポロビールの星マークは明治時代の北海道開拓使の北極星をデザインした旗印に由来しているそうです。一方、アルビレックス新潟のエンブレムは白鳥をデザインしたもので、そのくちばしの上に星(はくちょう座のアルビレオに相当)が輝いています。また、基調のオレンジと青も二重星アルビレオの色に由来していて、アルビレックス新潟は恒星の色をチームカラーとしていることになります。このコラボの甲斐あってか、2016年J1年間順位15位でかろうじて降格を免れました。
 


今回の切手とエフェメラの一部の収集においては家族の自発的な協力を得ましたことを申し添えておきます。

 

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