サイクル24太陽活動のふり返り
 
福井 雅之
 
2008年5月発行の銀河鉄道に、太陽活動活発化によるアマチュア無線遠距離通信への期待を込めて”いよいよサイクル24の幕開け”の小さな記事を掲載しました。アマチュア無線家がHFからVHF帯で交信する際に不可欠なものが電波を反射する電離層。その反射状態が太陽活動に大きく依存していることから、ピークに向けて期待の声が高まってきた時期でもありました。(反面太陽の活発な活動で、高エネルギー粒子のよるコンピュータの誤動作や磁気嵐の通信への影響などマイナス面もありますので過度な活動は困りますが…)
 
あの記事から7年、今サイクルもピークを終えて下降期に入ったようなので全体をふり返ってみたいと思います。
ご存知のとおり太陽活動は約11年の周期で活発/不活発を繰り返しています。サイクル24は昨年11月に肉眼で太陽黒点が見えるなどと騒がれた時期もあったので活発だった印象があるかもしれません。
2008年頃の無線雑誌の記事は「今回のピークはいつか?活動規模は?」が最大の関心事で、毎月のように黒点数や太陽の活動状況を掲載、「今サイクルは活発」とのNASA予測もあってか大きな期待が寄せられていました。その後ピーク予想の2011年に近づくにつれ思ったほど黒点数が上がらない状況から今回は「活発な活動になりそうにない」との悲観的な記事が多くなり、マウンダー極小期(1600年半ばから1700年にかけての太陽活動低迷期)の再来ではないかと言われるまでになりました。
実際の太陽活動の推移(サンスポットナンバー)は高原を上がったり下がったりの繰り返しで、2011年末(SSN=100)と2014年春(SSN=120)に2つのピークはあったものの、前回のサイクル23(SSN=180)までは上がらず全体に低調であったと言えます。ただ諦めかけていた時期の2014年のピークは予想外の太陽からのプレゼントとなり、それなりの遠距離交信に貢献できたようです。
 
「太陽にどのような変化があって今回の低調さをもたらしたのか?」「1957〜1980年頃のサイクル19〜21のように、簡単な自作無線機で簡単に海外交信できたような活発な活動はもう来ないのか?」が今サイクルを終えてのアマチュア無線家の正直な疑問・感想ではないでしょうか。
今年5月に地元函南町にある月光天文台主催で、JAXA宇宙科学研究所のSOLAR-Bプロジェクトマネージャーの方の講演『太陽研究最前線:ひので、そしてSOLAR-Cへ』を聞く機会得ました。現在太陽を探査している「SOHO」「ACE」などの衛星とともに活躍している「ひので」の観測で、太陽面の磁気リコネクションの状態からフレアを予測することで宇宙天気予報の精度向上をめざすなど、短期で発生する太陽面活動は少しずつ解明されてきたようです。
ただ「何故太陽は約11年サイクルの活動を繰り返すのか?」「そのとき太陽内部にどのような変化が生じているのか?」「次のサイクル25の活動予測は?」など中期的な太陽活動はまだまだ謎に包まれており、今回の講演でも次回サイクルの活動については現時点では何とも言えないとのことでした。
この謎に挑むのがSOLAR-CからSOLAR-Dのプロジェクトで、サイクル25の立ち上がりを調査することで”太陽ダイナモ機構(11年周期の極の反転など磁気大気を生み出すメカニズム)”の解明に近づくことが期待できます。これが成功すれば将来のサイクルの規模予測がある程度できるようになるかもしれません。
 
先生によると次回サイクルの極大予測は2025年とのこと。この時期我々同好会メンバーも70歳に近づいていることになりますがSOLAR-Cそれに続くSOLAR-Dで太陽内部の解明が進んでいることと、サイクル25が再び活発な活動になることとを是非期待したいです。
 
 

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