銀河鉄道創刊40周年に思うこと
 
上原 貞治
 
 
  時間というものは不思議なもので、40年を短いと思うこともあれば、わずか3分間がとても長く感じられることもある。でも、同じ人間がひと つのことを続けてきたとした場合、40年間というのは誰からも文句なしに長い時間と言ってもらってよいだろう。もちろんそれは人間の人生の約半分の時間を 費やしたからである。もっとも、我らが「銀河鉄道」は40年間継続的に発行されているわけではないので、「長い時間を費やした」というよりは「長い時間が たっても廃止 されていない」というべきかもしれない(下に統計を載せる)。
 
 さてそれは良いとして、なぜ、銀河鉄道は今も発行されているのか? この疑問に答えることは私には難しい。それでは、銀河鉄道はなぜ創刊され たか? という問いはどうだろうか。こちらについては、銀河鉄道の創刊号1ページに関連することが書かれている(※)。それが当時の私たちの本心であった かどうかは今やわからないが、みんなで天文を楽しみ、勉強するという意図があったことは間違いないだろう。それが、現在でも続いているということは、その 時の目標がまだ達成されていないから、と考えるのはどうだろうか。子どもの時の夢がまだ達成されていないから続けている、なかなかいい理由じゃないです か!?
 
 話は変わるが、子どもの時に考えたことが大人になってみるとそうなっていないことが多い。例えば、仕事はもちろんとして家事や娯楽にまで個人 持ちの電子計算機(コンピュータの昔の呼び名)を使うなどということは子どもの時には思いもよらないことだった(もしインターネットがなかったら、今日ま で銀河鉄道を続けることはたぶん不可能だっただろう)。また、私自身のことを書けば、当時ソビエ ト連邦と呼ばれていた国を訪れる(私が訪れたのはロシア連邦になってからだが)というのもとても当時は考えられないことであった。もちろん、良いことばか りではなく、自分の住んでいるところが震度6の地震に見舞われ、国内の原発事故による放射性物質が相当量降ってくるなどという思いもよらぬこともあった。
 
 しかし、ここで特に言いたいのは逆の方向の場合である。子どもの時にこんなことは今後何度でもある、と考えていたことが、大人になってからは 二度と起こらない貴重な体験になっていることも多い。西中筋天文同好会でリヤカーに望遠鏡を載せて観測会に出かけたり、小学生に星を見せに行ったこと、仲 間うちでクラスメートまで巻き込んでスライド映写会を開いたこと、会員F氏の提案した三段池公園での「UFO(ウホー)飛ばし大会」をやむなく中止したこ と、...。些細な経験だけれども二度と経験できないことである。そうであれば、日々新たな経験を積み重ねていくことの価値は決して衰えることがない。私 たちが「銀河鉄道」を続けている理由がここにあるというのも、これまたいいんじゃないですか。
 

(※)昔は、もともと天文愛好家イコール孤独愛好家といういうイメージがあって、事実そのとおりだったそうです。なかには、孤独が好きだから天 文をはじめた人もあったといいます。しかし天文愛好家がふえた今 慣例を返上して同好会というグループまではつくらなくとも 近所の仲間と連絡をとって共 同で天文を勉強しようという人がふえています。なぜかといえば、やはり大勢でやるほうが楽しいし、協力し合ってどの人も よりよい天文の勉強ができるから でしょう。私たち西天同好会でも このような目標のもとに観測会をそしてこの会誌「銀河鉄道」をのばしていきたいものだと思っています。
(西中筋天文同好会「銀河鉄道」No.1 (1972.10) p.1 より抜粋)




 最後にデータ編として、40年間の各年に銀河鉄道が何冊発行されたかまとめておこう。ちなみに今号は通巻第88号である。下で (○、△)というのは西 暦○年に△冊出たという意味である。(○〜×、□・△)は、○年から×年のあいだの□年間において毎年△冊という意味である。

(1972、3) (1973、10)  (1974、12) (1975、8) (1976、6) (1977、5) (1978、4)
(1979〜1993、15・0) (1994、1) (1995、0) (1996、1) (1997〜1999、3・0)
(2000、2) (2001、3) (2002、4) (2003〜2011、9・3) (2012、2)

これを足し算すると40年で88冊になるでしょう。足かけ41年のうち、銀河鉄道が1冊でも発行された年は22で、まったく発行されなかった年19を上回っている。

 もっとも接近して発行された2冊は、通巻第39号と40号で、中わずか8日間で発行された(週刊誌並み!)。また、もっとも間があいたのは、通巻48号と49号で15年と10カ月である。



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