2011年1月〜8月の天文現象の報告
                          上原 貞治
                               
 
以下で、"◎>"は、2011年年頭に出した「私が選んだ2011年の天文現象」からの引用です。●は私による観測(不測も含む)報告です。今回は、発行日の関係で8月20日で締めとしています。
 
 
◎> 1月8日の小惑星メデアによる10等星の掩蔽は、この種の現象の中で今年もっとも好条件のもののひとつです。
●この現象を観測しましたところ、約20秒間の掩蔽による減光を確認しました。私の観測地である茨城県つくば市では、小惑星の中心付近が恒星を掩蔽したしたようで、報告されている観測の中でもっとも長い減光時間を記録しました。
 
◎> 6月16日の皆既月食は、本州ではおおむね皆既が始まる頃に沈んでしまいます。
●これは、つくば市では曇りのため観測できませんでした。
 
◎> C/2009P1 ガラッド彗星は、かなり大きな彗星で1年間にわたって眼視で観測できると期待されます。年末から来年初めにかけて6等くらいになると予想されます。
●現在、順調に増光中です。7月14日未明には9.0等で観測しました。
 
○不規則に減光を繰り返す変光星かんむり座R星(R CrB)は、すでに4年間にわたって減光状態にあり、これは観測史上最長の異常の長さとも言える減光だそうですが、2011年の前半に復光の兆しが見え始めました。
●7月16日に、12.6等と観測しました。これは、復光中ですが、まだ深い減光状態にあります。すぐに6等に復光するのか、それとも当面は減光状態にとどまるのか、まったく予想がつきません。
 
●8月12〜13日頃のペルセウス座流星群は、もともと月の条件が悪かったですが、満月の近い月に薄雲がかかり1等星も見えない状況でした。
 
 3月11日の大地震の夜は、それは美しい星空でした。かつて、空襲や台風で大きな被害が出たあとの異様なまでの星空の美しさが悲しい思い出になった、と人が書いたものを本で何度か読んだことがありますが、まさにそのような気分を実感させてくれるものでした。
 本震の日の夜は、大きい余震が相次いでいたので、服を着たまま部屋で寝ていたのですが、早朝に大きな余震が起こって目を覚まし、うちから飛び出しました。(実は、これは長野・新潟方面で起こった関連の大地震でした)。念のため、そのあとは家族ともども車で夜を明かすことにしました。結局のところ、この夜は余震のためにほとんど眠ることが出来ませんでしたが、印象深い星空を見ることが出来ました。しかし、星空を見て思い浮かぶのは、津波に襲われどうなっているのか想像も出来ない東北の沿岸の夜の光景でした。
 
 3月14日以降は、節電のキャンペーンがしかれました。茨城県では計画停電は実施されませんでしたが、かなり徹底した節電がしかれ、市の中心部から西部の方向の夜空は以前と比べてはっきりと暗くなりました。夏になってもこの傾向は変わっていません。夜空が暗くなるのは、私にとっては文句なくうれしいことなのですが(地上の防犯のために夜空まで明るくする必要はない)、原子力発電所の事故とリンクされてしまったことはどうにも納得がいきません。電力事情とはいっさい関係なく、自然保護の観点からダイレクトに夜空を照らすような照明を制限するよう求めたいと思います。夜の道を歩いていると、店舗の灯りも暗く、時代が30年ほど遡ってしまったように感じます。景気の後退は困りますが、夜が暗いこと自体は、私にはまったく悪くない風景です。
 
 

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