2000年の天文現象・途中経過報告
                            上原 貞治
         
 西中筋天文同好会のホームページに「私が選んだ2000年の天文現象」というのを載せています。すでに、2000年もほとんど終わってしまったので、この辺で、選んだ天文現象が実際どうだったのかまとめ、義理をはたすことにしましょう。
 
>>>> 3月25日の小惑星ペネローペによる恒星食は、夕方の薄明中の現象ですが隠される星が東空にあり7等とまずまず明るいので、特に日没の早い関東では十分期待できます。予報では掩蔽帯は、茨城県北部に上陸し能登半島を貫いて日本海に抜けています。でも、予報の誤差を考慮すると本州・四国全体が掩蔽可能性の圏内にはいります。<<<<
 この現象は、私もちゃんと観測しました。茨城県つくば市から観測したところ、恒星は小惑星に隠されませんでしたが、南関東(千葉と東京と神奈川)で観測した観測者から、恒星食が見られたという情報が入っています。というわけで、つくば市での私の観測も、小惑星の大きさの上限を決めるのに多少役に立つことになったと思います。
 
>>>>C/1999S4リニア彗星は、6月上旬から明け方の北東の空に見られるようになります。光度は6月上旬で9等、中旬8等、下旬6〜7等と予報されています。(中略)月遅れのお盆の頃までは何とか追跡できるかもしれませんが、5〜6等まで暗くなっていることでしょう。<<<<
 リニア彗星は、光度上昇が予報よりかなり鈍り、2等くらい暗いところを推移していました。春以降は、順調な光度上昇と停滞を繰り返すようになりました。私は、7月9日の明け方、一度だけこの彗星を見ました。8等で、細いはっきりとした尾が伸びていました。大彗星のミニチュアという感じでした。7月20日以降、夕方の西空で見ようとしましたが、空の条件が悪く捕らえることができませんでした。そうしているうちに、核が分裂し、7月末には急速に暗くなってしまったそうです。最大光度で6〜7等にしかなりませんでした。
 
>>>> 7月16日の皆既月食は、最良の条件のものです。欠け始め20時57分、皆既の始め 22時02分、皆既の終わり23時49分、欠け終わり17日0時10分となっています。全長193分間の天文ショーを日本全国から見ることができます。<<<<
 これは、双眼鏡で観察しました。長すぎてかえって疲れたという感じです。皆既の中心時刻でも月面はかなり明るく、赤い色をしていました。月の明るさに非対称性がないか注意してみたのですが、月のもともとの模様の効果を差し引くと有意な非対称性はないようでした。
 
 
>>>> ペルセウス座流星群は、8月15日が満月で条件が悪いです。12日の明け方なら月が西に低くなって何とかなるのではないでしょうか。<<<<
 11日、12日 の夜とも、悪天候で観測できませんでした。
 
>>>> しし座流星群は、今年もまだまだ期待できます。11月19日が下弦で月の条件は良くないですが、明るい流星の出現に期待しましょう。16/17、17/18の2夜の観測が必要です。<<<<
 17/18日の夜は悪天候でした。19日未明の3時頃、12分間くらい空を見上げましたが流星は一つも見られませんでした。 あとから知ったニュースでは、今年もピークはヨーロッパなどで観測され、日本時間の17日の夕方と18日の夕方に あったそうです。ZHR数百ということでたいした出現ではなかったようです。
 
 他に、さそり座デルタ星の増光というニュースが入ってきたので、早速観測しました。これは、2.3等星のさそり座デルタ星が実は変光星であって(これまで知られていなかった)、7月下旬に、突然、増光を始めたというものです。私は、7月24日と29日に、肉眼で観測しました。24日は、近くに雲があってもう一つはっきりとしなかったのですが、29日には、星座の印象が変わるほど増光しているのがはっきりとわかりました。結局、このころが最大光度(1.8等)で、8月に入ってからは、暗くなりはじめているようです。
 この天文現象が、私にとって2000年の(まだ終わってないので「今までのところ」ですが)最高の現象でした。
 
 
 現状は、こんなところです。では、マクノート・ハートレー彗星に期待することとしましょう。
 11月に久々の眼視クラスの新彗星、宇都宮・ジョーンズ彗星が発見され、12月中旬に6等まで明るくなりそうですが、南天にあるため国内からの観測は厳しいようです。