編集後記
上原 貞治
インターネットが世に広く用いられるようになって、図らずも昔のものごとに出会えることが多くなった。そのような例は私にとってはたくさんあ
るが、最近、買ったCDもそうである。
そのCDは、高石ともやとザ・ナターシャー・セブン 我無土下座「フィールド・フォーク・フロム・中津川」Vol.2(下の写真)というもの
で、ナターシャー・セブンがその最盛期にさしかかろうとしていた時期の名盤(レコード盤)の復刻盤である。当時の我無土下座(カムトゲザ)は、フォーク界の大御所・笠木
透氏が田口正和氏、ドン佐野氏らとともに土着性の強いフォークを岐阜県の中津川の近くの坂下で進めていたもので、これにやはり大御所・高石ともや氏らが共
鳴し、これら一連のコンサートとレコードの出版を行ったものであった。このレコードについては、私はKN氏がダビングしたテープを借りて聴いたのだと思う
が、今になって、そのなつかしい録音に出会うことが出来た。
なぜこんなことを書くかと言えば、実はこの時期の高石ともや氏は西中筋天文同好会とつながりがあるのだ。1975年に発行された「銀河鉄道」
印刷版第33号(休会前最終号)に高石氏は依頼に応じて寄稿をして下さった。そこにはフィールド・フォークや我無土下座の話が出てくるが、
これは、おもに同じ1975
年の夏に行われたコンサートのことらしい。上記のレコードは、これより早く少し早く1975年の春頃に出たもので、録音は1974年12月〜1975年2
月となっている。1975年のコンサートに関連するフィールド・フォークVol.3の復刻版も現在でているが、これについては確か当時のKN氏の評価は低
かったように憶えている。
1974〜76年にはザ・ナターシャーセブンはラジオ近畿放送の「日本列島ズバリリクエスト」のDJをしていたこともあり、これらの曲はかな
りの固定ファンを持っていた。
今聴いても、「川のほとり」、「時は流れて」、「わが大地のうた」はすばらしい。観測会でみんなで歌ったことがそのまま思い出される。思えばあれから30
年がたってしまった。高石氏、笠木氏はいまでもコンサートを続けているらしいし、宵々山コンサートも続いているらしいが私は行ったことがない。ナター
シャーの3人が現在は活動できなくなっているので私にとってはこれらの名曲はすでに過去のものになっている(お二人が若くして亡くなられたことは本当に残
念である。残った城田氏には復帰してほしい)。過去は絶対に返って来ない。懐かしむ行為によっても返ってこない。当時と今ではその「時代精神」というもの
が違うのだ。違う時代にいる今の私には、過去を歴史として認識し、それを分析することによって当時行われていたことを振り返ることしかできないのである。
めぐる冬の 雪がまう 川のほとりの
枯れあざみ
うしろ姿の 花なのに 心を止める 人はなし
おなじ土 おなじ草 変わりはないのか かなしいぞ
人は去り 時は流れ 変わってゆくのか かなしいぞ
(笠木透 作詞 田口正和 作曲)
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