シリーズ・ あなたにもできる最先端の天文学研究(5)
その他の非常に珍しい突発的現象
上原 貞治
 
  数年とか数十年に一度しか起こらない現象で、いつそれが起こるかわからないような現象を、たまたま見た人は学問的に貴重な経験をしたことになります。こういう現象を見たときは、まず落ち着いて、それを見ていない研究者が研究資料にできるような記録を残すことが重要です。このような珍しい現象は見ようと思って見られるものではありませんので、それをひたすら待っても仕方のないことですが、ひょっとしたら見られるかもしれないと普段から気を配っていると見られる確率が上がるかもしれません。
 
低緯度オーロラ:
 太陽で大爆発が起こると2日くらい後で地球の低緯度地方でもオーロラが見られることがあるといいます。これは、爆発に伴って太陽から放出された陽子などの荷電粒子が、地球までとどいて上層の大気と相互作用するためだといわれています。低緯度オーロラは、極地方で見られるものと違って、カーテン状にはなっておらず、空が薄赤く輝くのだそうです。北海道など比較的緯度の高いところの方が出現頻度は高いようですが、京都府、高知県や宮崎県でも観測されたことがあります(「銀河鉄道」WWW版第13号参照)。予報が出たら北の空の暗い所で観測を試みてください。
 
隕石の落下:
 流星が大気中で燃え尽きず地上まで達したものを隕石と呼んでいます。隕石の落下は、地上で隕石を採集することで確認されますが、落下が目撃されてもその隕石を採集することができることはかなりまれです。落下の様子の詳しい観測によって、隕石がもと走っていた軌道が計算でき、落ちている隕石の捜索を有利に導くことができます。また、隕石が発見できた時は、その成分の分析と太陽系内での軌道を照らし併せて貴重な研究ができます。隕石が上空で分裂した時は、その破片が直線上に散らばる傾向があるので、1回の落下で複数の隕石が地上で採集された時は、それらをつなぐ直線上の場所を探すと有効かも知れません。落下が観測されていない隕石が地上で発見されることはしばしばあります。
 
爆発変光星など:
 爆発変光星というのは変光星の一種で、不規則に短時間だけ増光するものをいいます。多くの場合、増光は突発的で、いつ増光するかは予想できません。個々の変光星が増光することはきわめてまれなので、はっきり確認されていないケースもあるようです。また、これとは多少違いますが、ガンマ線バーストという現象が最近注目されていて、系統的に観測されています。人工衛星でガンマ線バーストが観測されると地上の観測者に即座に通報され、望遠鏡で光学的に観測する手はずになっていますが、すぐに暗くなってしまいますので、肉眼や小望遠鏡で観測するためには、この速報を待たずに観測・記録するべきです。これができれば、専門家の観測に先んじることができます。でも、パトロールカメラなどを使わないのであれば偶然に頼るしかありません。
 さらにこれに関連して、正体不明の明るい星を短時間だけ見たという報告がしばしば寄せられています。多くの場合、2等星〜−2等程度で、肉眼で見える時間は、数秒から数分程度、動いていない、ということです。熱心な観測者ならこのような現象を何度か見たことがあるのではないかと思います。これの正体については諸説あってよくわかっていません。望遠鏡で見たという例さえありますが、正体はわかっていません。
 多くの場合に考えられるのは飛行機や人工衛星であろうと思います。これらの場合は、数十秒たっても全く動かないということはないはずです。双眼鏡などで移動を確かめるべきでしょう。流星がまっすぐにこっちに向かっているのだ、というふうに考える人がいますが、数秒に渡る流星がその間動いていないように見える確率は相当低いので、それは考えにくいです。多くの場合、すぐに暗くなってしまいますので観測らしいことは何もできませんが、暗くなってしまってもその方向にカメラを向けて露出数十秒程度の固定撮影を繰り返すことが有効でしょう。もしその光が多少でも残っていれば、それが日周運動をしているか確認することができるでしょう。日周運動をしていれば、それは地上物体や人工物体である可能性はありません。そうなると、ガンマ線バーストなどの変光星である可能性を考えざるを得ないでしょう。