太陽系の衛星 (第5回)
                      上原 貞治
 
6.海王星の衛星 −− 一種無秩序
 
 
海王星の衛星系は、木星、土星、天王星ほどの秩序が感じられない。むしろ、破格の衛星が見られる。そして、その破格の衛星が古くから知られている大きい2つの衛星、トリトンとネレイドである。
 
 内側の6つの衛星は「主系列的」と言えないこともないが、軌道半径の序列にあまり美しい規則性が感じられない。そして、その主系列の外側を締めるはずの大衛星がプロテウスのみになっている。太陽系有数の大衛星のトリトンは逆行衛星であり、ネレイドは軌道半径も離心率も大きく(0.75で強度の楕円形)、主系列衛星ではない。これらは、後から海王星に捕獲された衛星である。            
 
 その外側も海王星に捕獲された衛星である。海王星の近辺は、冥王星やカロンの存在に見るように、比較的大きな惑星天体(最近の言葉では、太陽系外縁天体)が存在しており、 それが、海王星の衛星系を構成したということであろう。
 
 下に、海王星の衛星の表を掲げる。データは、天文年鑑2008からとった。
 
  衛星名 発見年 軌道半長径 半径(km) 軌道傾斜角   vb (km/s)
      (万km)        
海王星            
N 3 Naiad 1989 4.823 29 4.7   4.93
N 4 Thalassa 1989 5.007 40 0.2   4.83
N 5 Despina 1989 5.253 74 0.1   4.72
N 6 Galatea 1989 6.195 79 0.1   4.35
N 7 Larissa 1989 7.335 96 0.2   3.99
N 8 Proteus 1989 11.764 208 0 3.15
N 1 Toriton 1846 35.48 1350 156.8   1.82
N 2 Nereid 1949 551.34 170 7.2   7.20
N11 Sao 2002 2015.3 15 56.9 * 0.27
N12 Laomedeia 2002 2136.6 15 42.5 * 0.32
N9 Halimede 2002 2190.1 20 120.5 * 0.31
N10 Psamathe 2003 4760 18 125.1 * 0.22
N13 Neso 2002 4860 21.5 137.4 * 0.20
 
 
軌道傾斜角は*が黄道面、他は母惑星の赤道面に対する傾斜角。vbについては連載第1回を参照。

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