太陽系の衛星 (第4回)
                      上原 貞治
 
5.天王星の衛星 −− 一種典型的
 
 
木星と土星の衛星系はよく似ていて、内側に、「主系列」とでも言うべき順方向に公転している衛星群があり、比較的、規則的な間隔をおいて小さな離心率で存在している。これらの衛星の中には比較的大きいものが複数含まれている。その外側には離心率が多少大きい逆行衛星が存在している。逆行性衛星はいずれも小さい。
 
 このような衛星系の典型的な特徴は天王星の衛星系にも引き継がれている。そういう意味で天王星の衛星系は太陽系の中でのきれいな典型例といえるであろう。しかし、天王星系においては一つ典型的でないことがある。それは天王星の自転が公転面に対して横倒しになっている−−公転面でゴロゴロ転がっているように見える−−ことである。ここでいう衛星の軌道傾斜は天王星の赤道面に対してであり、逆行衛星は、天王星の自転の反対方向に公転しているということである。
 
 さて、天王星の衛星を内側から順に見ていこう。                
 もっとも内側の11の衛星、コーディリアからペルディタまでは、天王星の近くに比較的集中している。クーピドを除くとそこそこの大きさを持っているのが面白い。その外のパック、ミランダ、アリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロンが主系列というべき衛星である。しかし、内側の衛星の内の大きいもの、ポーシア、クレシダなども含めて主系列と見てもよいかもしれない。
 
 その外側は、ずっと間が空いていて逆行衛星群に移る。シコラックスは、逆行衛星の中では大きいものの一つである。マルガレットは比較的最近発見された順行衛星であるがごく小さい。
 
 天王星の衛星は、木星型衛星の典型例といえ、母惑星の公転が横倒しになっている割には、衛星系はおとなしい構成になっているといえる。天王星の質量が、木星や土星よりもかなり小さいにもかかわらず、離心率と軌道傾斜角がほどんど正確にゼロになっている衛星が多いことも注目される。
 
 下に、天王星の衛星の表を掲げる。データは、天文年鑑2007からとった。
 
  衛星名 発見年 軌道半長径 半径(km) 軌道傾斜角   vb (km/s)
      (万km)        
天王星            
U 6 Cordelia 1986 4.975 20 0.1   4.47
U 7 Ophelia 1986 5.376 12 0.1   4.33
U 8 Bianca 1986 5.916 25 0.2   4.10
U 9 Cresida 1986 6.177 40 0   4.01
U10 Desdemona 1986 6.286 32 0.1   3.97
U11 Juliet 1986 6.436 47 0.1 3.93
U12 Portia 1986 6.61 68 0.1   3.87
U13 Rosalind 1986 6.993 36 0.3   3.77
U27 Cupid 2005 7.48 5 0   3.64
U14 Belinda 1986 7.526 40 0   3.63
U25 Perdita 1986 7.64 20 0   3.60
U15 Puck 1985 8.601 80 0.3   3.40
U26 Mab 2003 9.7734 5 0   3.19
U 5 Miranda 1948 12.978 235 4.3   2.77
U 1 Ariel 1851 19.124 580 0 2.28
U 2 Umbriel 1851 26.597 585 0.1 1.94
U 3 Titania 1787 43.584 790 0.1 1.51
U 4 Oberon 1787 58.26 760 0.1 1.31
U22 Francisco 2001 428.1 6 147.6 0.53
U16 Caliban 1997 716.89 45 140.9 0.41
U20 Stephano 1999 749.245 10 144.1 0.43
U21 Trinculo 2001 857.8 5 167 0.39
U17 Sycorax 1997 1221.36 95 159.4 0.40
U23 Margaret 2003 1468.9 5.5 50.7 0.45
U18 Prospero 1999 1611.349 15 152 0.33
U19 Setebos 1999 1820.516 15 158.2 0.34
U24 Ferdinand 2001 2100 6 167.3 0.29
 
 
軌道傾斜角は母惑星の赤道面に対する傾斜角。vbについては連載第1回を参照。

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