2006年5月〜12月の天文現象の報告
                          上原 貞治
                               
◎>>5月には、73P/シュワスマン・ワハマン彗星が地球に接近して5等級くらいまで明るくなります。<<
 
 この彗星は、B核とC核の2つが双眼鏡で確認できるようになったものの、6等程度までしか明るくなりませんでした。
 
◎ 7月から8月にかけて変光星はくちょう座χ星が今までになく明るくなりました。 隣のη星(4.0等)よりもはっきりと明るくなり、星座の印象も少し変わりました。
 
◎2006年6月に発見された C/2006 M4 SWAN彗星は、9月末から日本で観測できるようになりました。10月中旬には6等、下旬には急増光を起こして4等まで明るくなりました。その後また暗くなりましたが、約1カ月に渡り、双眼鏡で楽に眺められる彗星となりました。(下の写真をご覧下さい。) 
 
◎>>11月7日の小惑星カリオペによる恒星の掩蔽は、北海道、東北、関東方面で見られると予報されています。この種類の現象で今年最高の条件のものです。<<
 
 実際に、カリオペによる掩蔽が茨城県北部で観測されました。また、カリオペの衛星リヌスによる掩蔽が東京都多摩地方で観測されました。私は茨城県つくば市で観測しましたが、通過でした。
 小惑星の本体と衛星の双方による恒星の掩蔽が複数の地点で確実に分離された形で観測されたのはおそらく世界初です。そういう意味では、私の通過観測も、世界で初めての小惑星の本体と衛星の完全な分離を確実に証明する通過観測になったといえそうです。
 
◎11月9日の水星の太陽面経過は、日本では、日出時にすでに現象が始まっていました。当日は、好天に恵まれまして、日出直後の7時頃から黒い水星を太陽面にはっきりと捕らえることができました。(表紙写真を参照ください。)
 
◎>>12月のふたご座流星群の条件はまずまず申し分のないところです。<<
 13〜14日、14〜15日の夜は、いずれも悪天候で観測できませんでした。
 
まだ、年末にあるていどメジャーな天文現象がありますが、もし観測できましたら次回に報告します。
 
写真:C/2006 M4 SWAN彗星
データ:2006年10月29日19時00分、ニコンD70, レンズ f=50mm, F2, 露出5秒,トリミング, 明るさとコントラストの補正、撮影:上原貞治、左の矢印の先がSWAN彗星。右は球状星団M13。

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