2004年5月〜12月の天文現象の報告
                          上原 貞治
 
 今期は久しぶりに天文現象が目白押しでした。こんなに天文に振り回されたのは、西中筋天文同好会が発足した中学生の時以来だったかも知れません。「熱心な観測者」であった昔のことを思い出しました。観測地はすべて 茨城県つくば市 です。
 
◎>>>C/2002 T7 リニア彗星は、C/2001 Q4 ニート彗星と並んで、5月末〜6月に肉眼彗星になると期待されている彗星です。 ......日本でいちばん観測しやすくなるのは5月末で、予報では4等級です。もう一方の、C/2001 Q4 ニート彗星は、5月初め頃までは南天に低く見られません。 それ以降は、北上して観測しやすい位置にあり、5月に3等、6月に6等、7月に8等程度で長く観測できるでしょう。<<<
 
 肉眼ダブル彗星と騒がれましたが、残念ながら予報より多少暗く肉眼で見えるほどではありませんでした。ニート彗星のほうは、5月11日の宵の西空に初めて見ました。このころは悪天候続きで、この日も肉眼では2等星までしか見えないような条件でしたが、10×70mm双眼鏡で迫力十分に見えました。約4等級でしたので空の条件さえ良ければ肉眼でも見えたでしょう。その後6月上旬に至るまで4〜5等くらいで尾を引く姿が美しく眺められました。一方のリニア彗星は6月にはいってやっと天候に恵まれ観測できるようになりましたが、すでに暗くなって拡散しており、双眼鏡でやっと見える程度(5〜6等)でした。リニア彗星について言えば、冬の間はしっかりした姿で南半球でもそれなりに増光していたので、これは少し期待はずれという感じでした。
 
 
◎>>>5月5日朝の月食は、東日本では皆既になる前に月が沈んでしまいますが、西日本では、皆既中に月没となります。<<< 
 
 これは悪天候で見られませんでした。
 
 
◎>>>6月8日午後の金星の太陽面経過は、130年ぶりの超珍現象です。太陽の前を通過する金星は見逃せません。<<< 
 
 この大物現象は、曇天を押して空を眺め続けました。太陽面の黒い金星を少しの間だけ見ることができました(前号の「銀河鉄道」(WWW版15号)を参照)。
 
 
◎>>> C/2003 K4 リニア彗星は、7月に良い条件で、7等くらいまで明るくなると見込まれます。<<<
 
 この彗星は結構大きい彗星ですがあまり地球に近づきません。予報通り、7〜8月に7等級になり双眼鏡で観測できました。
 
 
◎>>> ペルセウス座流星群の予報極大時刻は、8月12日の午前です。月齢26の月がありますがほとんど問題にならないでしょう。<<<
 
 佐藤勲氏による予報などによると、12日の早朝にかなりの出現が予報されましたので、観測を行いました。3時50分〜4時20分の間、南東の空を中心に見張っていましたが、8個のペルセウス群流星を見ることができました。3等星までしか見えない空でしかも4時頃からは薄明が始まる状況で、見られた流星はいずれも1等よりも明るいものでした。条件を勘案するとある程度の出現だったのではないかと思います。ペルセウス群が大出現するとなぜか我が事のようにうれしいものです。
 
 
◎ 天文現象というわけではありませんが、7〜8月に「プロジェクト『地球の大きさを測ってみよう』」というのに参加して、北極星と太陽南中の観測をしました。本誌の別稿をご覧下さい。
 
 
◎ 8月下旬、マックホルツ氏が久しぶりに彗星を発見しました。C/2004 Q2マックホルツ彗星です。こちらでは、この彗星を9月22日の未明に10等で観測しました。その後、徐々に明るくなり、12月下旬に4等に達しています。この彗星は地球との位置関係が良く、日本付近の緯度では来年の初夏までずっと良い条件で観測ができます。いちばん明るくなるのは2005年の1月頃です。その後、北天に移って周極星となります。
 
 
◎>>>10月2日の小惑星(141)ルーメンによる9.4等星の掩蔽は、今年のこの種の現象の中で最も条件の良いものです。初期予報の掩蔽帯は、九州、四国、近畿、中部、関東と日本列島を縦断しています。<<<
 
 悪天候でした。全国的に観測できなかったようです。
 
 
◎>>> 10月14日の日食は、全国で見られますが、食分は軽微(本州中部で0.2程度)です。<<<
 
 これは関東では天気が悪く、11時過ぎにわずかに欠けた姿を雲間から見ることができただけでした。どうも、部分日食といい、水星・金星の太陽面経過といい、太陽がらみの現象ではこういうパターンが多くなっています。
 
 
◎>>> 11月5日の明け方には、金星が木星に0.6度まで近づきます。<<<
 
 つくば市では好天に恵まれてきれいに見えました。続く10日朝の月と2惑星の接近も見応えがありました。(今号の表紙写真)
 
◎12月13日と14日の宵は、ふたご座流星群を見るために、肉眼で短時間だけ空を見上げました。ふたご群の流星が、それぞれ1個ずつ見られました。
 
 
◎>>> 12月21日の小惑星(380)フィドゥキアによる8.2等星の掩蔽は恒星の明るいですが、現象が起こると見られるのは、東日本(東北、関東、東海地方)のどこかの狭い領域だけです。<<<
 
 これは、曇りで観測できませんでした。12月24日の小惑星(868)ロバによる10等星の掩蔽は観測はしましたが、群雲の往来に邪魔され、掩蔽の有無は確認できませんでした。