シリーズ・ あなたにもできる最先端の天文学研究(2)
       
      彗星と流星の観測
 
                            上原 貞治
彗星:
 
   彗星は、いろんな意味でアマチュア向けの天体といえます。その発見や観測には必ずしも大望遠鏡を必要としません。とくに、全光度の観測や尾の観測には、小望遠鏡や双眼鏡、時には肉眼による眼視観測が有効です。彗星は、かなり大きな広がりを持っている場合、視野の狭い大望遠鏡やCCDカメラ、光電管による測光には向いていません。こういう観測には、写真や小望遠鏡で十分であるというよりも、むしろこういう簡単な装置が向いていると言うべきでしょう。現在でも全光度を見積もる観測は通常眼視で行われています。こういう淡く広がった天体の場合、大望遠鏡を眼視で覗いても決して見やすくなりません。正確な光度の見積もりには経験を要しますが、たとえば7等より明るい彗星の場合これは双眼鏡でも可能です。
 
 尾の観測にも双眼鏡が向いています。彗星の明るさや形状の眼視による継続的な観測は、彗星の物理に関して貴重なデータとなります。ただ、尾の詳細な形状の研究などには写真やCCDカメラによる観測の方が向いています。
 
 発見後間もない彗星や日出直前または日没直後地平線近くにある彗星は、観測者が少ないので、観測すれば貴重な観測となります。また、彗星は、短期間だけ急に明るくなるアウトバーストと呼ばれる現象を起こすことがあるので、こういう貴重な現象を捕らえることは価値があります。
 
 さて、小望遠鏡や小双眼鏡で彗星の発見はできるのでしょうか? 40年前ならともかく、現在ではこれはかなり難しいようです。 アマチュアによる発見自体が現在では相当難しい情勢となりました。LINEARとNEATに代表される小惑星自動発見プログラムがかなり暗いうちから彗星を見つけてしまうためです。今のところ、南天と太陽周辺はこれらのプログラムの捜索範囲外ですが、彗星が増光前に捜索範囲にあるときに発見されてしまうので、アマチュアによる彗星発見は激減しています。
 でも、発見が不可能になったわけではありません。現在でもアマチュアによる捜索は行われています。眼視による捜索としては、25cm以上の望遠鏡または15cm程度の双眼鏡が必要であるようです。これより小型の望遠鏡による眼視による彗星の発見は全く不可能であるというわけではありませんが、最近は全くなされていないようです。
 
 
 流星:
 
 流星観測は通常肉眼で行われますので、この場合、たいした装置はいりません。流星群の場合、数時間だけ、場合によっては、1時間以下だけ突発的な出現をすることがあります。こういう場合、流星が飛んでくる方向(輻射点)が、ある程度の高さに上がっていないとこういうような大出現は見られないので、世界的にも観測できる場所は限られてしまい、たとえば日本やその近くでしか見られなかったということもしばしば起こります。こういう場合の観測は、流星群の観測史に残る貴重なものになります。
 
 流星の観測は、あまりにもたいした装置なしに、最先端に迫る研究ができますのでここにいろいろと書く気が起こりません。要はアイデア次第ということです。また、最近は、流星群の出現の予報がかなり当たるようになってきました。予報を観測で確かめることは、計算理論研究にたいして大きな貢献となります。
 
 昼間でもできるFM観測というのがありますが、これもFMラジオがあればあとは適当なアンテナを立てればできますのでたいして金はかかりません。しかし、最近はFM局が増えたので、同じ周波数帯の別局の電波が受かってしまって観測にならないことが多いと聞いています。
 
 あと、ビデオ観測というのもあります。イメージインテンシファイアなどの増感装置をつけると高価なものになりますが、普通の家庭用ビデオそのままでも明るい流星は撮影可能です。これで流星群の大出現の確認が可能です。撮影は簡単ですが、あとでビデオモニタを見はりながら肉眼観測と同じように観測・記録しないといけません。これは夜空を見るのと同じ時間がかかるうえに、はるかに疲れます。