2003年8月〜2004年4月の天文現象の報告
                          上原 貞治
 
 今期は十分な観測ができたとは言いかねますが、それでもいろいろありました。
 
◎>>>7月〜9月は、火星大接近による火星の観測好機です。さらに8月27日は最接近で、この接近距離は人類観測史上最も近いものであると言われています。当夜晴れておれば、いままでどんな火星観測家が見たよりも近い火星を眺めて下さい。<<<
 火星を20cm反射で何度か見えました。さすが大接近で大きな模様はおおむね見えました。9月9日の月との接近も見ました。写真撮影もしました(あまり良く写っていませんので写真は省略)
 
◎10月29〜31日に、低緯度オーロラが本州中緯度以北に出現しました。京都府大江山で観測されたことは、本誌前号で報告されています。茨城県内でも観測されたところがあったようですが、私のつくば市内からの観測では見ることはできませんでした。
 
◎>>>11月〜12月上旬には、エンケ彗星が10年ぶりの観測好機を迎えます。夕方の北東の空で6〜7等級になります。<<<
 今回のエンケ彗星の接近は難物でした。7等くらいになったのですが、大きく拡散しており、11月17日に私が見たところ何となく見える気がする程度にしか見えませんでした。
 
◎>>>2004年5月に肉眼彗星となると期待されているリニア彗星が11月頃から小望遠鏡の射程内に入ってきます。...12月には8〜9等で観測されています。年初には夕方の西空で7〜8等で観測できます。 以後、3月中は観測できませんが、4月後半には、明け方の東の空低くにちょっと顔を出します。予報では、1〜2等級です。 日本でいちばん観測しやすくなるのは5月末で、予報では4等級です。 <<<
 12月21 日に初めてこの彗星に望遠鏡を向けました。まだ9等級でしたが、コマや尾にダストの放出がすでに激しいようで、大彗星の予感を感じさせる姿をあっさりと捕らえることができました。1月下旬には7等まで増光しました。2月になって地球から一時的に遠ざかったので増光は足踏み状態になりました。4月後半に明け方の空で探しましたが今のところ見出していません。予報よりやや暗めで4等台だということです。
 
◎4月9日の夜には、小惑星マティルドによる9等星の掩蔽の観測をつくば市でしました。今回は、つくばを訪問中のPaul Maley 氏(IOTA(International Occultation Timing Association)の副会長)と申し合わせて布陣して観測しました。残念ながら通過でした。福島県で掩蔽が観測されています。
 
◎C/2004 F4 ブラッドフィールド彗星は、4月24日に初めて見えました。4等級でした。コマはよく見えませんでしたが、尾はけっこう明るく、双眼鏡で明るい薄明のなかにはっきりと見えました。
 
 突発的な現象ではありませんが、今年の冬、2月には珍しい星を見ました。それは、カノープスです。それも茨城県の内陸部、つくば市の平地から南方の光害の中に見えました。観測地は北緯36度09分で、計算上の南中高度は大気差を考慮してもわずか1.4度です。4日後に同じ場所でもう一度時間通りに見えることを確認しましたので間違いありません。