2003年1〜7月の天文現象の報告
                     上原 貞治
 
 それでは「私の選んだ2003年の天文現象」をベースにして今年1〜7月の天文現象を振り返ってみましょう。
 
  
◎>>>1月〜2月のニート彗星は、2月に太陽に0.1天文単位まで接近しますが、見かけ上太陽に近くなり2月になるとだんだん観測が難しくなります。接近するまでに消滅してしまう可能性もあります。運が良ければ6等級くらいで地上から見られるかもしれません。<<<
 C/2002 V1ニート彗星は、1月初めには8等でしたが、その後どんどん光度を上げ、2月上旬には6等どころか4等で観測されました。近日点通過頃に昼間の空に探しましたが見つかりませんでした。米国では、同様の観測でこの彗星を捕らえたという報告もあります。人工衛星SOHOの写真ではマイナス3等程度に見えました。
 
◎2月に C/2002 Y1 フエルス・ホルボルセム彗星を7等で観測しました。
 
◎>>>3月23日の小惑星によるインテラムニアによる6.6等星の掩蔽は、今年でいちばん条件の良い小惑星による掩蔽のひとつです。北近畿、北陸、東北、関東が観測可能範囲です。西日本では日が暮れる前の現象となりますが、星が明るいので観測可能でしょう。<<<
 つくば市で眼視とビデオで並行して観測をしました。直前から好天に恵まれ、掩蔽による減光の観測に成功しました。日本とハワイで合計30件以上の観測がありました。つくば市での観測では増光が2段階であることがわかりました。これは、恒星が近接連星であることの発見につながりました。また、減光と増光には0.4秒程度かかり、これは恒星が巨星であるためだと説明されています。私の観測結果は西中筋天文同好会のホームページで公開されています。
 
◎>>>5月7日の水星の太陽面経過は、太陽面を水星の黒い円盤が通過します。黒点と区別が付かないだろうと思っている人はぜひ見てみて下さい。黒点とは黒さが全く違います。<<<
 平日の昼間であったため、最初の水星の侵入は観測できませんでした。(どうせ曇っていました) 水星が太陽面にだいぶ入り込んだ夕方になって観察を開始しました。やっぱり水星は小さかった!
 
◎今年の関東地方の7月は連日の梅雨寒で、ほとんど星を見ることはできませんでした。下旬になっても梅雨明けしませんでしたが、晴れ間から「さそり座」が見えたことがありました。さそり座δ星がかなり増光しており、β星とアンタレスの中間程度の明るさになっていました。さそりの頭の3星の明るさがバラバラになって何か散漫な印象を受けました。(表紙写真参照)