2002年の天文現象の報告
                     上原 貞治
 
 「私の選んだ2002年の天文現象」をベースにして今年の天文現象を振り返ってみましょう。
 
 
◎C/2002 C1 池谷-Zhang彗星は、2月下旬から明るくなりました。3月にかけて4等になりました。大ベテランの池谷さんが彗星を発見されたのにも驚きましたが(失礼)、これが300年以上前に出現していた周期彗星であったことにも驚きました。
 
◎>> 3月20日の土星食は、今度は東京−福井を結ぶ線より北側で見られます。月が若い分だけさらに好条件です。<<
 つくば市の自宅で望遠鏡で観望しました。土星が月にゆっくりと入り込んでいくよう様子がよく見えました。
 
◎>> 4月7日には、小惑星パンドラが、なんと1等星ポルックスを隠します。肉眼で観測可能ですが、見られるのは北海道南部西部の非常に狭い範囲です。<<
 北海道でだけ見られるということで北海道行きを検討しましたが、実現できませんでした。残念ながら、北海道は広い範囲で曇り誰も観測できなかったようです。つくば市では晴れましたので、予報時刻前後にポルックスを見張りましたが、もちろん掩蔽は起こりませんでした。
 
◎>> 5月の上旬には、水星、金星、火星、木星、土星の5惑星が、夕方の西空に勢揃いします。<<
 4月29日に、西空の5惑星を次々と望遠鏡で見ることができました。
 
◎>> 6月11日の日食は、日本南方の太平洋上(たとえばマリアナ諸島付近)で金環日食となるもので、日本からは、4割程度欠けた太陽が見られます。<<
 つくば市では曇りがちでしたが、そこは太陽、雲間から欠けた太陽を見ることができました。本誌前号の表紙写真をご覧下さい。
 
◎8月には、C/2002 O4 Hoenig彗星、C/2002 O6 SWAN彗星が相次いで見られました。8月7〜8日の夜には、前者を9等級で、後者を6等級で観測することができました。Hoenig彗星は、8月28日は7.6等で見られました。
 
◎>> ペルセウス座群は、月の影響もなく、最良の条件です。<<
 8月12日の夜、綾部市上杉町で、私の家族と田中氏の家族で観測会を行いました。残念ながら曇りがちで、星空が見られたのはほんの30分程度でしたが、この短い時間に数個の流星を見ることができました。非常に明るい流星の軌跡が、雲を通してにじんだ太い筋となって見られたときには歓声が上がりました。
 
◎10月21日の夜の小惑星ネマウサによる恒星の掩蔽は関東地方の一部で掩蔽が観測されました。つくば市付近も結果的に掩蔽帯に入っていたようですが、私は都合により観測しておりませんでした。残念。
 
◎11月11日の夜に、未だ流星群の観測されていない母彗星(名前は公表されていない)からの突発流星群の予報が出されました。観測を行いましたが、それらしい出現はありませんでした。
         
◎>>11月18〜20日、しし座群は、去年の今年なので、一応要注意です。<<
 あれから丁度1年後の11月19日早朝、南東の空を見張りました。4時15〜30分の15分で2個のしし群流星が見られました。小惑星ゴートによる掩蔽を観測するために流星観測を切り上げました。
 
◎同11月19日早朝の小惑星ゴートによる恒星の掩蔽は、「私の選んだ・・・」では1つ星評価でしたが、その後の佐藤氏の改良予報で北関東地方での掩蔽確率が上がりました。私はつくば市付近で観測を行いました。多少、薄雲があったのですが、4時54分台後半、掩蔽によると思われる6.5秒間の掩蔽を捕らえました。他の箇所での掩蔽の観測は今のところ報告されておりません。私にとって5年ぶり2回目の小惑星による掩蔽現象の観測となりました。
 
◎12月2日の早朝、たまたま、窓から外を見ると、スピカと火星と金星がまっすぐに並んでいるのを発見しました。
 
◎>>ふたご座群は、上弦の月が西に低くなればOKです。<<
 まだ上弦の月が高い12月14日22時前から22時半頃に観測しました。約20分間に6個の流星を見ることができました。
 
◎12月16日の早朝には、土星の衛星テティスが9等星を掩蔽するという珍しい現象が予報されていました。残念ながら、つくばでは肝心の時刻に薄雲に阻まれ掩蔽は確認できませんでした。東北・関東地方で掩蔽を観測できたところがあるようです。
 
◎12月中旬に発見されたC/2002 X5 工藤・藤川彗星を12月26日朝に見ることができました。7.5等で、10倍70mmの双眼鏡で楽に見ることができました。
 
 それから、これは天文現象ではありませんが、今年度のノーベル賞は天文学の観測の分野で大きな貢献のあった3人の人に授賞されました。受賞者のデービス氏は、初めて太陽ニュートリノの観測を行いました。小柴氏はカミオカンデという装置を使って太陽ニュートリノ問題を確認し、さらに大マゼラン雲に出現したニュートリノの検出を行いました。ジャッコーニ氏は天文衛星などを通じてX線天文学を推進しました。デービス氏とカミオカンデの太陽ニュートリノの観測については、本誌前号の「30年来の難問、『太陽ニュートリノ問題』ついに解決!」をご覧下さい。