私が選んだ2016年の天文現象
          上原 貞治
 
 今年も例年のごとく2016年のめぼしい天文現象をリストアップしてみました。
 下の表を見て下さい。「時」は、おおよその時刻で一部でいわゆる30時制を採用しています。つまり、24時より大きい数値は翌日の早朝を意味しています。本当は、もっと正確な時刻がわかっているのですがここでは省略しています。目安だと思って下さい。実際に観測する際は、もっと詳しい予報をご自分で入手して下さい。
 
「種別」の意味は以下の通りです。
 
ast --- 小惑星による恒星の掩蔽(恒星食)
com --- 彗星の観測好期
occ --- 月による星食
pla --- 惑星に関わる現象
S.ecl -- 日食関係
M.ecl ---  月食関係
met --- 流星群
Jsat --- 木星の衛星関係
 
  このリストの製作には、小惑星による恒星の掩蔽については、佐藤勲氏による初期予報、その他の現象については天文年鑑2016(誠文堂新光社)を利用しました。 
 
 天文現象は、関東地方で観測に適している現象ということで選びました。これは筆者が現在関東に住んでいるためであります。他の地方に在住の方には申し訳ありません。関西地方(実際には近畿全般)での現象の観測の可否を最終欄に示しました。◎は関西でもほぼ同様に観測できる現象、○は多少条件は異なるものの観測できる可能性のある現象、×は観測できない現象を示します。
 
月/日 種別 現象 評価 関西
1月〜3月 明け方 com C/2013 US10 カタリナ彗星 ***
1月〜4月  com C/2014 S2 PANSTARRS彗星 **
1月〜7月 com C/2013 X1 PANSTARRS彗星 ***
1月4日   met しぶんぎ座流星群 **
1月5日 24 ast (121) Hermione **
1月9日 明け方、昼 pla 金星と土星の接近 **
3月9日 11 S.ecl 部分日食 **
3月下旬 明け方 com 252P/LINEAR彗星 *
3月22日 21 ast (747)Winchester **
3月23日 21 M.ecl 半影月食 *
4月1日 21 ast (140) Siwa ** ×
5〜6月   pla 火星接近 **
5月12日 20 ast (2731) Cucula *
5月13日 20 Jsat ガニメデによる恒星食 **
5月15日 20 ast (828) Lindemannia * ×
5月30日 24 ast (2634) JamesBradley **
7月1日 21 ast (1567) Alikoski ** ×
7月2日 23 ast (755)Quintilla **
7月3日 23 ast (625) Xenia *
7月22日 27 ast (142)Polana ***
7月24日 28 ast (1599)Giomus *
8月12日   met ペルセウス座流星群 ***
8月28日 昼。夕方 pla 金星と木星の接近 **
9月17日 4 M.ecl 半影月食 **
9月19日 20 ast (696) Leonora *
10月19日 19 ast (980)Anacostia ***
10月22日   met オリオン座流星群 **
11月2日 19 ast (154) Berta ***
11月16日 2 occ アルデバランの星食 **
12月4日 22 ast (1008) Lapaz **
12月4日 29 ast (4424) Arkhipova *
12月6日 27 ast (924) Toni **
12月13日   met ふたご座流星群 **
 
 
 では、評価の*印の2個以上のものをいくつかかいつまんで詳細を紹介しましょう。
 
●C/2013 US10カタリナ彗星は、2015年末にすでに6等まで明るくなって、観測好機の状況で年を越しました。
 
● C/2013 X1 PANSTARRS彗星は、2〜3月には夕空で8等、4月以降は明け方の空で増光し6等程度になる見込みがあります。
 
●3月9日の日食は、日本では部分日食で、本州では最大食分0.2程度です。
 
●  5月13日の木星の衛星ガニメデによる恒星食は、恒星は7等星です。衛星のほうが明るいのですが、高倍率で見ると衛星が拡大されて見やすいかもしれません。
 
● 火星は今回はかなり近い、大接近に準じる接近になります。
 
● ペルセウス座流星群は、月齢9の月がありますので、月が西に傾いた以降の観測に適しています。
 
● 9月17日の半影月食は、本影に近い所まで月が侵入するので、肉眼でも違和感のある程度には判別できると予想します。
 
●10月19日の小惑星(980)Anacostiaによる恒星の掩蔽は、恒星が10.0等で、この種の現象で、日本の本州で今年もっとも条件のよいものの一つです。ただし、小惑星の直径は89kmとそれほど大きくなく、本州でも掩蔽が見られる地域はかなり限られます。
 
● 11月16日のアルデバランの星食は方角的にはよい条件ですが、月が満月に近く明るいので、双眼鏡などがあったほうがよいでしょう。
 
 2016年は、残念ながら日本ではビッグな天文現象は見られないようです。突発的な事象の出現に期待します。