私が選んだ2005年の天文現象
上原 貞治
 
 2005年のめぼしい天文現象をリストアップしてみました。
 下の表を見て下さい。「時」は、おおよその時刻で一部でいわゆる30時制を採用しています。つまり、24時より大きい数値は翌日の早朝を意味しています。本当は、もっと正確な時刻がわかっているのですがここでは省略しています。目安だと思って下さい。実際に観測する際は、もっと詳しい予報を自分で入手して下さい。
 
「種別」の意味は以下の通りです。
 
ast --- 小惑星による恒星の掩蔽(恒星食)
com --- 彗星の観測好期
ocl --- 月による星食
pla --- 惑星現象
M.ecl ---  月食
met --- 流星群
 
 このリストの製作には、小惑星による恒星の掩蔽については、佐藤勲氏による初期予報、その他の現象については天文年鑑2005(誠文堂新光社)を利用しました。 
 
 天文現象は、関東地方で観測に適している現象ということで選びました。これは筆者が現在関東に住んでいるためであります。他の地方に在住の方には申し訳ありません。関西地方(実際には近畿全般)での現象の観測の可否を最終欄に示しました。◎は関西でもほぼ同様に観測できる現象、○は多少条件は異なるものの観測できる可能性のある現象、×は観測できない現象を示します。
月/日 種別 現象 評価 関西
前年〜5月   com C/2004 Q2 マックホルツ彗星 ***
1月2日 23 ast Elpis **
1月3日 21 met しぶんぎ群 **
1月5日 21 ast Lumen ***
1月10日 24 ast Hubble * ×
1月22日 21 ast Modestia **
2月〜4月初 明け方 com C/2003 T4 LINEAR彗星 ***
2月2日 28 ast Adeona **
2月3日 21 ast Rotraut * ×
2月6日 18 ast Vesta ***
2月12日 23 ast Maestlin(カストルを掩蔽) **
2月13日 21 ast Elpis *** ×
3月10日 28 ast Yatskiv * ×
3月31日 0 ocl アンタレスの星食 ***
4月2日 19 ast Stobbe * ×
4月24日 19 M.ecl 半影月食 **
5〜7月 夕方〜宵 com 9P/ テンペルI彗星 **
6月〜7月初 明け方 com 21P/ ジャコビニ・ツィンナー彗星 *
6月12日 23 ast 1986 TS6 *
6/25〜7/2 夕方 pla 金星と水星の接近 **
7月   com P/1983 V1 ハートレー・IRAS彗星 *
7月4日 26 ast Tergeste ** ×
7月9日 20 ast Sekanina *
7月13日 23 ast Preziosa *
8/11〜13 夜半〜 met ペルセウス群 ***
8月16日 24 ast Susi *
9月21日 28 ast Gudrun ***
9月28日 26 ast Astapovich **
10月〜11月   pla 火星接近 ***
10月8日 19 ast 2000 QM151 **
10月8日 met ジャコビニ群 **
10月17日 21 M.ecl 部分月食 **
11月1日 24 ast Priscilla **
11月10日 27 ast Nina **
11月17日   met しし群 **
11月28日 29 ast Atropos **
12/13〜15 21以降 met ふたご群 **
12月27日 21 ast Genua *
 
 
 では、評価の*印の2個以上のものをいくつかかいつまんで詳細を紹介しましょう。
 
● C/2004 Q2 マックホルツ彗星は、すでに2004年12月に4等にまで明るくなっています。1月にはもっとも明るくなり3等台に突入する可能性があります。以後、北半球からの観測条件はよく、継続的に5月まで観測できるでしょう。
 
● 1月2日と5日の小惑星による恒星の掩蔽は、今年の中でも特に条件の良いものです。
 
● 2月6日のベスタによる恒星食は、恒星が10等台と暗いので通常の眼視での観測では確認困難です。
 
● 2月12日の小惑星メーストリンによるカストルの掩蔽ですが、掩蔽帯はきわめて狭いもので、相当の幸運がないと観測できません。本州で掩蔽される可能性が高いのは、2重星カストルの暗い方の星です。
 
● C/2003 T4 リニア彗星は、明け方の空で多少高度は低いものの、3月下旬には6等級くらいになるでしょう。
 
● 3月31日のアンタレスの星食は、月齢20の月による現象で好条件です。 
 
● 6月末から7月初めには、水星と金星が夕方の西空で接近します。とくに、6月28日の朝には、5'まで接近します。水星を見つけるいい機会でしょう。
 
● 火星の接近は、10月30日です。2003年の超大接近には及びませんが、それでも、それと比べて約20%小さく見えるだけです。
 
● 10月8日は、ジャコビニ群の出現する日です。本年は母彗星が近日点を通過していますので要注意の年ですが、それほどの大出現はないものと予想されています。
 
● 10月17日の部分月食は、宵の良い時間帯に起こりますが、食分はわずかに0.068です。
 
今年は、とりたててという現象はありませんが、一つだけあげるとすると、火星の接近でしょうか。C/2004 Q2 マックホルツ彗星が長期間継続的に観測できるのも注目されます。