私が選んだ2004年の天文現象
  2004年は、彗星の当たり年でかつ金星の太陽面経過という超大物現象もあります。特に、5〜6月は天文月間の様相です。
 
 下の表を見て下さい。「時」は、おおよその時刻で一部でいわゆる30時制を採用しています。つまり、24時より大きい数値は翌日の早朝を意味しています。本当は、もっと正確な時刻がわかっているのですがここでは省略しています。目安だと思って下さい。実際に観測する際は、もっと詳しい予報を自分で入手して下さい。
 
「種別」の意味は以下の通りです。
 
ast --- 小惑星による恒星の掩蔽(恒星食)
com --- 彗星の観測好期
pla --- 惑星現象
S.ecl --- 日食
M.ecl ---  月食
met --- 流星群
 
 ast については佐藤勲氏による初期予報によっています。実際の観測には恒星の位置を示す星図とより詳しい時刻予報が必要です。必要な方は天文雑誌などやインターネットから入手して下さい。また、佐藤氏による詳しい情報や現象直前のより正確な予報が必要な方は、上原(uehara@post.kek.jp)まで連絡していただくか、あるいは佐藤勲氏(ANA65381@nifty.ne.jp)に直接連絡してください。 
 
  このリストは、関東地方で観測に適している現象ということで選びました。これは筆者が現在関東に住んでいるためであります。他の地方に在住の方には申し訳ありません。今回から、関西地方(実際には近畿全般)での現象の観測の可否を最終欄に示しました。◎は関西でもほぼ同様に観測できる現象、○は多少条件は異なるものの観測できる可能性のある現象、×は観測できない現象を示します。他の地方での観測の可否については、解説中にも書くようにします。
 
 
 
  では、評価の*印の2個以上のものをいくつかかいつまんで詳細を紹介しましょう。
 
● C/2002 T7 リニア彗星は、C/2001 Q4 ニート彗星と並んで、5月末〜6月に肉眼彗星になると期待されている彗星です。すでに2003年11月から観測しやすい状態になっており、12月には8〜9等で観測されています。年初には夕方の西空で7〜8等で観測できます。
 以後、3月中は観測できませんが、4月後半には、明け方の東の空低くにちょっと顔を出します。予報では、1〜2等級です。
 日本でいちばん観測しやすくなるのは5月末で、予報では4等級です。
 
● もう一方の、C/2001 Q4 ニート彗星は、5月初め頃までは南天に低く見られません。 それ以降は、北上して観測しやすい位置にあり、5月に3等、6月に6等、7月に8等程度で長く観測できるでしょう。 
 
● 5月5日朝の月食は、東日本では皆既になる前に月が沈んでしまいますが、西日本では、皆既中に月没となります。
 
● 6月8日午後の金星の太陽面経過は、130年ぶりの超珍現象です。太陽の前を通過する金星は見逃せません。
 
● C/2003 K4 リニア彗星は、7月に良い条件で、7等くらいまで明るくなると見込まれます。また、多少条件は落ちるものの、11月にも明け方の空で観測のチャンスがあります。
 
● ペルセウス座流星群の予報極大時刻は、8月12日の午前です。月齢26の月がありますがほとんど問題にならないでしょう。
 
● 10月2日の小惑星(141)ルーメンによる9.4等星の掩蔽は、今年のこの種の現象の中で最も条件の良いものです。初期予報の掩蔽帯は、九州、四国、近畿、中部、関東と日本列島を縦断しています。
 
● 10月14日の日食は、全国で見られますが、食分は軽微(本州中部で0.2程度)です。
 
● 11月5日の明け方には、金星が木星に0.6度まで近づきます。
 
● 12月21日の小惑星(380)フィドゥキアによる8.2等星の掩蔽は恒星の明るいですが、現象が起こると見られるのは、東日本(東北、関東、東海地方)のどこかの狭い領域だけです。
 
◎ とにかく、今年は6月8日の金星の太陽面経過です。そして、5月〜6月のダブル肉眼彗星。どちらも珍しい現象ですが、どのくらい見栄えのする現象になるでしょうか。
 
 
[参考文献]「銀河鉄道」WWW版第8号、2003-2004年の珍しい天文現象